【稼げなくなる可能性も!】スマート農業のメリット・デメリットや本来の目的を解説

【稼げなくなる可能性も!】スマート農業のメリット・デメリットや本来の目的を解説

とりあえずスマート農業を導入すれば、
データ化・効率化が進んで売上が増えるんだよね?

と思っていませんか?

実は、スマート農業を導入すると返って利益が下がる可能性もあるのです。

今回の記事では、スマート農業のメリット・デメリットに加え、「スマート農業は単純に利益を増やすためだけが目的ではない」ことを、下記4つの項目に分けて解説していきます。

1.スマート農業の目的
2.現状の農業の課題は何か
3.スマート農業の取り組み内容の例一覧
4.スマート農業のメリット、デメリット

本記事でスマート農業の正しい知識を取得して、あなたの農業経営に導入するべきなのかを適切に判断できるようにしましょう。

スマート農業とは?そもそもどんな目的がある?

スマート農業とは?そもそもどんな目的がある?

スマート農業とは、

・農業機械の自動運転化
・カメラや画像などにより作物生育状況のデータ化
・データ分析による作物管理および技術継承

などを活用することで、安定的かつ継続的に農業生産を行う新たな農業です。

誤解を恐れず言ってしまえば、スマート農業は利益向上がメインの目的ではなく、農業生産を自動化・簡略化し継続的に農業生産ができるようにすることなのです。

間違いなく”農業界”にとってはプラスですが、個々の農家、特に小規模農家にとってプラスか?というとクエスチョンマークがつきます。

実際に、導入費用や維持費などのコスト面によりかえって経営を圧迫する可能性があったり、補助金を使って導入したのはいいけど売上の向上に結びつかないというケースも多々起こっています。

なぜスマート農業はホットなの?農業の課題を見ると理解できる

なぜスマート農業はホットなの?農業の課題を見ると理解できる

続いて、なぜスマート農業がこれだけ叫ばれるのかをみていきましょう。

その理由は「今の農業の課題」を見るとわかりやすく理解できます。

課題①:担い手の減少や高齢化により労働力が低下している

現在の農業において最も問題となっているのが、労働力が低下していることです。

実際に、下記の2つが現状になります。

1.担い手の減少:1960年〜2020年にかけて農業者は1175万人から136万人まで減少している
2.高齢化問題:2020年の農業者136万人の平均年齢は67.8歳であり、高齢化により労働力が低下している

このように、担い手の減少と高齢化による労働力低下が問題となっており、作業が回らないという農場が増えています。

課題②:天候や土壌に左右される

これは昔からずっとそうなのですが、農業は天候に大きく左右されます。

「今日は雨の日だから作業はしないでおこう」だったり「今年は台風だったから不作だった」という状況は当たり前のようにあります。

ですが、他のサービス業はどうでしょう?毎年、雨が降っても台風が来ても売上を安定的に出さなければ倒産です。

農業もこのようになるべき、ということで植物工場などの環境を制御するような技術も登場してきています。

また、天候だけでなく農業は土壌が非常に重要です。

土作りは非常に年月がかかり、かつ熟練した技術が必要です。

ですが一般的なスピードの速いビジネスの世界では、PDCAを1年〜数年かけないと回せないというのは言語道断です。

そうした課題を解決しようということで、そもそも土をなくしてしまうという水耕栽培の技術も登場してきています。

担い手や労働力の減少に伴いさまざな課題が発生している

続けて、担い手や労働力の減少に伴いさまざな課題が発生しています。

例えば、

・農業者が減少しているため、1人あたりの作業量が拡大している
・農業機械の操作や収穫判断・剪定などは、熟練の技術が必要であるため新規参入するのは敷居が高い

などがあります。

つまり、「熟練技術の後継者不足」「作業量に対する労働者不足」の課題を解決しなければなりません。

スマート農業の取り組み内容の例一覧

スマート農業の取り組み内容の例一覧

スマート農業って実際にどんなことをしているの?

と気になっていませんか。

ここからは、実際のスマート農業の取り組みの具体例を紹介していきます。

植物工場や水耕栽培システム

安定した収量を毎年のように再現するために、環境(天候・土壌)の影響を受けにくい栽培方法が生み出されてきています。

例えば、オランダではレタスの巨大な植物工場があったり、日本でも水耕栽培のシステムを導入したブルーベリー農園などがあります。

そして、これらは単に環境制御をするだけでなく、センシングデバイスがつけられておりデータ収集も可能です。

水田管理システム

モバイル端末により、給水バルブや落水口を遠隔操作または、自動制御が可能になります。

センシングデータや気象予測データから、水田の水管理を最適化することにより、水管労力を80%も削減可能です。

このようにデータを大量に集めたものをAIが分析して、最適解を導くというのがスマート農業の基本です。

人工衛星やドローンによる作物生育管理

人工衛星の撮影画像やドローンカメラにより、農作物の生育状況を可視化およびデータ化します。

そしてやはり、集めた膨大なデータをAIが分析して最適解を導き出します。

結果的に、適切な時期の追肥や収穫が可能になり、収穫量の増加や品質向上が可能になるというわけです。

画像診断による病害虫被害の予防

こちらはスマホなどで作物を撮影すると、病害虫被害や対策がパッと理解できるというものです。

原理は先ほどと同様です。
まずは大量の作物の病虫害の外観画像やDNA情報をデータ化しておきます。
そして…もうわかってきましたね。その膨大なデータをAIが分析します。

「この見た目の時はこの病虫害」と分析結果をAIが返してくれることで、不慣れな農業者でも病害虫の被害を最小化することが可能になるというわけです。

熟練技術の継承が可能

作物の収穫時期や剪定などは、熟練農業者の判断や技術が必要です。しかし、スマート農業を導入すると、熟練農業者の判断基準や技術を可視化でき、新規農業者でも早期に技術継承が可能になります。

例えば、シャインマスカットにおける「房づくり・摘粒・収穫」の時期の判断をスマートグラス(メガネ型のデバイス)で撮影しデータ化します。

そして同様にデータを大量に集めてAIに解析させます。

5G回線を通して農業者が装着しているスマートグラスに作業方法を投影することにより、熟練農業者ではなくても適切な農作業が可能です

農作業機器の自動化

スマート農業の行き着く先は無人化・自動化です。

ここまでの技術はほとんど、「大量のデータ集積→AIが分析して最適解を導く」というものでしたが、最終的には「そのAIが出した最適解をAIが実行する」というところまで農業は進化すると考えられています。

そして実は「自走走行トラクター・自動運転田植機・自動収穫機・自動草刈り機」の導入は世界的に進んできています。

なんだかSFの世界のように思えますが、徐々に現実になってきているのです。

スマート農業のメリットは?

スマート農業のメリットは?

最後は無人化とちょっと怖い話になってしまいましたが、農業界全体ではなく、農業者目線ではどんなメリットがあるのか気になりますよね。

ここからは、スマート農業の導入によるメリットを解説していきます。

少ない人員で作業が可能である

一番わかりやすいメリットは人員削減です。農業機械の自動化や水田管理の遠隔操作などにより、本来必要な人員を大幅に削減することが可能になります。

これにより、農業の人員不足を解決方向に導くことが可能です。

生産量が増加できる

農作業の自動化や簡略化により、農業作業の効率化ができ規模を拡大できます。それにより、農業生産量を増やすことが可能です。

環境への負荷が減少する

データを活用して農薬や肥料を使用することで、ピンポイントかつ最小の使用量で済みます。それにより、環境への負荷を軽減できます。また、ドローンによる農薬散布で農業機械の使用も最小にできるため、CO2の削減にも繋がります。

新規参入しやすくなる

スマート農業により、熟練の技術を画像や数値によりデータ化することが可能です。それにより、熟練の農業技術が可視化され、新規農業者も継承しやすくなり、農業の新規参入が容易になります。

スマート農業のデメリットはコストがかかることである

スマート農業のデメリットはコストがかかることである

スマート農業のデメリットは、導入コストが大きいことです。スマート農業はロボットや管理システムといった複数の機械を導入しなければなりません。

例えば、

・自動走行トラクター:1390〜1760万円(税込み)
・自動運転田植機:687.5万円(税込み)
・スマート追肥システム:605万円(税込み)
・ほ場・施設環境モニタリング:100〜500万円

となっており、決して安い値段ではありません。

実際に小さい規模で高価なスマート農機を導入してしまい、農機経費が増大して利益が減少してしまった農家もあります。

このように、農業規模とスマート農機の費用を比較して導入を検討しなければなりません。

スマート農業の本来の目的を考え、本当に導入が必要なのか考えよう

スマート農業の本来の目的を考え、本当に導入が必要なのか考えよう

いかがだったでしょうか!

今回はスマート農業について解説しました。

まとめると、3つになります。

1.スマート農業は継続的に農業生産ができるように、農業を自動化・簡略化しようとする動きであり、決して利益を上げるためだけの活動でない
2.スマート農業の導入により、熟練技術の後継者不足や労働者不足を解決方向に導くことができる
3.スマート農業を導入するかは、導入経費や維持費を踏まえて利益が出るのかをきちんと計算しなけらばならない

スマート農業は、農家を助けるのではなく農業を助けるというのが現状になっています。

「導入費用分の利益を出すことができるのか、維持費の負担は問題ないのか」今一度、綿密に計画してからスマート農業の導入を判断しましょう!

(参考:農林水産省・スマート農業