野菜の育て方の記事を見ていると、必ずと言っていいほど出てくるのが、”マルチ”。
「マルチを張っておきましょう」とだけ書いてあり、家庭菜園初心者の方だと、
どの種類のマルチがいいの?
マルチってどうやって張ればいいのか?
と悩んでしまいますよね。
そこで本記事では、若手農家が「簡単にできるマルチ張り」を解説していきます。
あなたも一人でマルチを上手に張れるようになり、農作業を効率化でき、たくさん収穫できるようになりますよ♩
マルチングの素材
そもそもマルチとは、畝の表面を何らかの資材で覆うことを言います。
マルチングとも呼ばれ、もともとは稲わらや刈り取った雑草などを使用していましたが、現在ではマルチといったら”ビニール製などのマルチシート”を指します。
いろんな種類が存在し、それぞれの特徴や適した作物などが異なるので、チェックしてみましょう。
マルチシート
マルチといったらこれ。ビニールやプラスチックなど様々な素材で作られたシートです。
ロール状で、畝の幅に合わせた各サイズが販売されています。
黒色がメジャーですが、さまざまな色があり、使用する季節や用途に合わせて選択すると、よりよい効果を得られます。このあたりは後ほど解説します。
育てる野菜の株間に合わせて穴をあける必要もありますが、あらかじめ穴が開いているタイプのものもあります。
稲わら
古くから野菜栽培に使われてきたのが”稲わら”です。
適度に隙間ができ、温度の急変が防げ、微生物や益虫のすみかとなって病害虫の予防にも繋がります
また、稲わらが水分を吸収するので、乾燥と過湿を防いでくれます。安価に購入でき、場合によっては無料で手に入る可能性もありますよ。
腐葉土
腐葉土でマルチングすることにより、夏は地温を下げ、冬は地温を上げる効果が期待できます。
ミミズや微生物のすみかになり、土をふかふかにしてくれます。栽培後はそのまま土中にすき込めば、土壌改良にも繋がります。
ただし、コガネムシなど一部の害虫にも好まれるため、注意が必要です。
雑草
刈り取った雑草もマルチングの素材になります。
雑草は適度な通気性があり、雑草が水分を吸収するので、乾燥と過湿を防ぎます。また、温度の急変を防ぎ、地温が安定しやすくなります。雑草の隙間にはミミズや微生物が潜むのに良い環境です。雑草が餌となって分解され、少しずつ有機物が供給されるので、ふかふかの土になっていきます。
何よりも、その場で手に入るのでコストもかからないのはいいですよね。
マルチシートの種類とそれぞれの特徴を見てみよう!
マルチシートはいくつかの色のものがあり、それぞれ期待できる効果が違います。
栽培する野菜や、季節などによって使い分けてください。間違った使い方をすると、かえって野菜の生育を悪くするので注意しましょう。
黒色 | 地温を上昇させ、雑草防止の効果が期待できます。 |
透明 | 地温の上昇が一番高いので、春先に使用することが多いです。 |
シルバー | 光を反射し、アブラムシなどの飛来を防止します。 |
グリーン | 地温上昇効果は黒と白の中間です。 |
白黒 | 表面が白色で、裏側が黒色のマルチです。 |
銀黒 | 表面がシルバー、裏側が黒色のマルチです。 |
地温の上昇や雑草予防効果をまとめると、以下のようになります。
白黒<シルバー<銀黒<黒<グリーン<透明
・雑草予防効果:
透明<グリーン<シルバー<銀黒・白黒<黒
安価で雑草防止ができ、地温上昇効果が期待できますよ。
マルチのメリットって?
マルチを張るメリットとして、”①地温の確保”と”②雑草の防止”は有名ですよね。
ですが、実は他にもさまざまなメリットがあります♩
①地温調整
マルチの種類によって地温を上げたり、上がるのを防ぐことも可能です。特に春先に夏野菜を定植するには寒い場合など、黒や透明のマルチをすることで地温を上げられ、生育を促進させられます。
②雑草防止
特に黒色マルチは遮光性があるので、雑草を防げます。穴をあけた場所以外は草が生えないので、除草作業の手間を省けます。
③保湿
水分の蒸発を抑えられ、適度な湿度が保たれるので、水やりの回数を減らせます。冬場であればほとんど水やりの必要がありません。また、雨による肥料分の流出が抑えられるのもメリットです。
④泥跳ね予防
雨による泥跳ねを防ぎ、泥跳ねによって起こる病気を防げます。また、作物が汚れにくくなり、収穫物の品質をよくできます。
⑤害虫予防
シルバーマルチなど、反射するマルチを使用すると、キラキラとしたものが苦手なアブラムシを遠ざけられます。アブラムシの被害はもちろん、アブラムシが媒介するウイルス病などの予防にも繋がります。
マルチのデメリット
上で見たように、基本的にマルチは非常に便利ですが、マルチによるデメリットも存在します。
①コストアップ
マルチを購入するためのコストがかかります。黒マルチは比較的安価ですが、それ以外のマルチは若干割高です。
ちなみに、マルチは再利用できなくもないですが、劣化するので使いまわしは非推奨です。
②作業の手間が増える
マルチを張る作業、撤去する作業が発生します。
また追肥をする際は、マルチをめくったり、穴をあけたりする必要があります(穴あきマルチを使えばここは問題ありません)。
③高温障害になることも
地温を上昇させるマルチですが、使用するマルチによっては、真夏に高温になりすぎて、生育に影響を及ぼす可能性もあります。季節や用途に合わせたマルチ選びが大切です。
④処分が少し面倒
使用後のマルチは、自治体によっては一般的な家庭ゴミとして収集されない場合もあります。また、撤去する際に破れた破片が土中に残ると、分解されずにいつまでも土の中に残ってしまいます。
必ずしもマルチが必須という訳ではないので、メリットとデメリットを天秤にかけて、面倒な場合などは稲わらなどを使用するのがおすすめですよ♩
一人で簡単!マルチシートの張り方【農家が教えます】
お待たせいたしました。
いよいよ農家が教える「簡単マルチシートの張り方」講座です。
もちろん、”一人で”できる方法です♩
以下、マルチの張り方を4ステップに分けて、画像と共に解説していきます。
手順①:畝の表面をレーキでならす
肥料を施し畝を立てたら、畝の表面をレーキなどできれいにならします。
表面に凸凹があると水が溜まり野菜の生育に影響を及ぼします。また種の発芽の揃いも悪くなるので丁寧に行ってください。
手順②:シートの端を土に固定
マルチシートを畝の端に合わせ、シートの先端をマルチ押さえで固定するか、土をかぶせて固定します。シートを伸ばしていき、所々をマルチ押さえで仮止めをします。
特に風が強い日は、一気に進めずに少しづつ進めると、風の影響を受けにくく作業がしやすいです。
手順③:マルチを足で引っ張りながら土を被せる
シートがたわまないように、裾を足で引っ張りながら鍬を使って土をかぶせていきます。
畝の端までいったら、少し余裕を持ってマルチをカットします。端をマルチ押さえで固定するか、土をかけ固定してください。
手順④:足で踏み固めて完成
マルチの裾の部分を足でしっかりと踏みつけて、しっかりと固定します。
シートが浮いている場所があると、強い風が吹いた時にあおられて簡単に剥がれてしまうので注意してくださいね。
全体像はこんな感じです。