贈答用高級フルーツとして大人気のサクランボ。
そんなサクランボを家庭で栽培できたらいいですよね。
一般的に販売されているサクランボは自家不和合成 (じかふわごうせい)といって、自分の花粉では受粉できません。しかも相性の良い違う品種の花粉でしか実にならず、なかなか栽培が難しいです。
そこで今回は、家庭菜園のプロが「初心者でもできるさくらんぼの栽培方法」を解説していきます!
1本で実がなり、簡単なサクランボの育て方を紹介するので失敗しにくく、安心ですよ♩
また、記事最後には大ぶりでぷりっぷりのサクランボを育てる裏技もご紹介します。
- サクランボの種類:家庭菜園には「暖地桜桃」が最適!
- 家庭菜園にはコンテナ栽培が向いているサクランボ
- サクランボの用土:水はけのよい弱酸性の土
- サクランボの苗の植え付け・植え方:コンテナは一回り大きめに
- 仕立て:大木にしないために主幹を切り詰める
- サクランボの花と実の付き方:うまくいけば鈴なりに!
- サクランボの手入れ:家庭菜園では人工授粉・摘果の必要なし!
- 剪定:上へ大きくならないように剪定
- サクランボの肥料:年に3回。元肥7、追肥2、礼肥1の割合で
- 病気・害虫・鳥対策:収穫期の鳥虫対策は早めに
- サクランボの収穫:収穫時期は5月中旬
- 【番外編】大ぶりでプリプリのサクランボを育てたい方へ
- 家庭菜園プロによるワンポイントアドバイス
サクランボの種類:家庭菜園には「暖地桜桃」が最適!
サクランボは学術的には桜桃(おうとう)といい、サクランボは桜桃の実を指します。
桜桃には、①甘くジューシーな甘果桜桃(かんかおうとう/スイートチェリー/西洋実桜「セイヨウミザクラ])、②すっばい酸果桜桃(さんかおうとう/サワーチェリー/酸実実桜[スミミザクラ])、③少し小ぶりな甘い実がなる暖地桜桃(だんちおうとう)/中国実桜[チュウゴクミザクラ])があります。
・甘果桜桃:一般的に売られている。甘い。自分の花粉で受粉できず栽培が難しめ。
・酸果桜桃:酸味が強い。日本ではあまり栽培されない。
・暖地桜桃:家庭菜園に最適!育てやすい。少し小ぶりの美味しい実をつける。
甘果桜桃
一般に売られている国内産のサクランボは「甘果桜桃」です。ほとんどの品種が自分の花粉では受粉できません。冷涼な地を好み、温暖化の影響で30年前にはほとんど作れなかった北海道でも盛んに栽培されるようになりました。一方で南の岡山県では育ちにくくなっているとの声も聞きます。真っ白な花を咲かせます。
酸果桜桃
「酸果桜桃」は、欧米ではジャムやケーキに好まれているサクランボで、日本ではほとんど生産されていません。レモンのように酸っぱくて生食には向きませんが、1本で自家受粉する(自家和合性[じかわごうせい])があり、虫や鳥の被害も少ないので、一部の愛好家の間では家庭菜園としても栽培されています。
暖地桜桃
「暖地桜桃」は、甘果桜桃に比べて実が小さく、皮が薄いので傷みが早いという欠点はありますが、1本でも実がなるサクランボです。とてもおいしく、耐寒性、耐暑性に優れた家庭菜園に最適なサクランボです。開花がほかの桜桃を含む桜の木より2~3週間早く、ほんのりピンクがかって綺麗なので、庭木として植えている家庭が多くみられます。初めて育てるのであれば、この暖地桜桃がおすすめ!
家庭菜園にはコンテナ栽培が向いているサクランボ
サクランボは、果実が雨に当たると裂果(れっか/実が割れる)します。
また、雨により、灰星病(はいぼしびょう)という実が腐る病気も媒介されます。
さらに、むき出しの実は鳥や虫の被害に遭いやすいです。
このような理由から、サクランボ農家ではハウスなどの施設で栽培をします。
家庭菜園だとハウス栽培は難しいので、大きめの鉢植えやプランターで育てる「コンテナ栽培」を行います。
コンテナ栽培だと、軒下に移動して雨を避けることもできますし、防鳥ネットをかけることも簡単です♩
サクランボの用土:水はけのよい弱酸性の土
サクランボの土は、弱酸性か中性の水はけのよい土が適しています。庭土であれば腐葉土を多く混ぜ込んでください。
コンテナ栽培の場合、市販の果樹栽培に適した土を使用すればOK!
サクランボの苗の植え付け・植え方:コンテナは一回り大きめに
コンテナ栽培の場合は、直径・深さとも30cmの10号鉢以上の少し大きめのコンテナに植え付けましょう。
サクランボ苗のベストな植え付け時期は、11月~3月(厳冬期以外)です。
1年苗だと棒状になっていますので、50~60cm程度に切り詰めてから植え付けます。
植え付ける際は、接ぎ木の部分は埋めないようにします。
ワンポイントアドバイスとして、苗の根を少しほぐすと新しい根が伸びやすくなりますよ。
※後ほど紹介する「多品種接ぎ苗」の場合は、2年苗以上なので切り詰めずにそのまま植え付けます。
仕立て:大木にしないために主幹を切り詰める
サクランボはかなり大きく育つ果樹なので、変則主幹形仕立て(へんそくしゅかんけいしたて)という仕立て方が適しています。
簡単に言うと、上へ伸びるのを押さえながら、横に広げていくという仕立て方です。
コンテナの場合、1m位の高さになったら、主幹を30cm位切り詰めて成長を止めます。
主幹は1本だけ上に伸ばし、実は横に伸びた枝につくので、枝をひもなどで引っ張ってできるだけ横に広げます。
こうすることで、収穫しやすい形にすることができますよ。
サクランボの花と実の付き方:うまくいけば鈴なりに!
サクランボの花は、サクラですから3月下旬から4月上旬に咲きます。
暖地桜桃だと3月初旬には咲き始めます。ほのかにピンクがかった花で、ソメイヨシノと同じように木全体が花で覆われます。
ただし、前年の上へ伸びる枝と長く伸びすぎた枝にはあまり花がつきません。花は花束状短果枝(かそくじょうたんかし)といっていくつかの花が密集して咲きます。
サクランボの手入れ:家庭菜園では人工授粉・摘果の必要なし!
暖地桜桃の場合、自分の花で受粉し、しかも受粉率も高いので人工授粉しなくてもOKです。
暖地桜桃以外の場合、虫がまだ少ない春先に開花するため、人工授粉する方が実つきはよくなります。
必ず違う品種の花粉をこすりつけてください。1花で10花程度受粉できます。
サクランボは束状の花が実になるので、うまく受粉すると多くの実が鈴なり状態になります。
農家の場合は少しでも実を大きくするために摘果(てきか)をしますが、家庭菜園の場合は摘果の必要はないでしょう。
摘果したとしても、目に見えるほどサイズUPはしません。
剪定:上へ大きくならないように剪定
剪定は1月~3月に行います。
ポイントとしては、真上に伸びる枝と、長く伸びている枝を切り詰めることです。
実がつく花芽は枝全体につくので、枝の先の方を切る分には花芽がなくなることはありません。
サクランボの肥料:年に3回。元肥7、追肥2、礼肥1の割合で
肥料はチッソ分が少ない有機質を多く含んだ有機配合肥料がおすすめ。
こちらは使い勝手がいい肥料としておすすめの肥料です♩
肥料は年に3回与えます。
まず、元肥(もとごえ)として11月に一握り分を幹から少し離れたところにばらまきます。
3月〜4月ごろに果実の成長を促すために元肥の1/3程度を、追肥(ついひ)として幹から少し離れたところにばらまきます。
実が終わったあと、元気がなかったら礼肥(れいひ)として9月頃に、元肥の1/4程度を幹から少し離れたところにばらまきます。
病気・害虫・鳥対策:収穫期の鳥虫対策は早めに
サクランボは、先ほど紹介した灰星病(はいぼしびょう)以外だと、病気よりも「鳥」と「虫」に注意が必要です。
開花の季節はメジロが蜜を吸いに来たり、ウグイスが鳴いたりとても愛らしいのですが、実が熟すころには鳥との戦いが始まります。
対策としては、実に袋がけをするか、全体を鳥よけネットで覆いましょう。また、カメムシも大敵です。大量にやってきて実を吸います。覆うネットは網目の細かいものがいいでしょう。
夏から秋にはコガネムシもきます。コガネムシは葉を食べ尽くしてしまうので、翌年の実つきが悪くなります。
対策としては、見つけ次第捕殺することです。
サクランボの収穫:収穫時期は5月中旬
サクランボの収穫は5月中旬~7月上旬、品種によって時期が異なります。
暖地桜桃は収穫時期が結構早く、5月中旬ごろです。
佐藤錦は6月中旬から7月上旬、紅秀峰だと6月下旬から7月上旬です。
紅秀峰とは相性が悪いですが香夏錦(こうかにしき)は、梅雨前の5月下旬に収穫できます。
【番外編】大ぶりでプリプリのサクランボを育てたい方へ
「やっぱり、佐藤錦のような大ぶりでプリプリしたサクランボがいいなぁ…」
相性のいい品種の組み合わせ
大ぶりのサクランボ(甘果桜桃)を栽培したいという時、最初に思い浮かぶのは「佐藤錦」でしょう。
「佐藤錦」は、違う品種がないと受粉しないので相手探しが必要です。「佐藤錦」の場合、「紅秀峰」「高砂」「ナポレオン」「紅さやか」は相性がいいのですが、「南陽」は受粉樹になりません。
「暖地桜桃」は開花の時期が全く違うため、甘果桜桃すべての品種に対して受粉樹にはなりません。そのほか「アメリカンチェリー」には佐藤錦や高砂、ナポレオンなどが必要です。
1本で大ぶりのサクランボを収穫できる方法
「大ぶりでプリプリしたサクランボがいい。
でも2本植えるスペースがないなぁ…」
このような方には、「ダブルプランツ/ハイブリッド苗/多品種接ぎ」という、1本の木から2種類の果実が採れる嘘みたいな苗がおすすめです♩
簡単に言うと、1本の台木(だいぎ/接ぎ木の基礎になる木)に、相性の良い2種類の桜桃を接ぎ木したものです。
台木と生長させる木(穂木/ほぎ)を接ぐことによって、台木とは違う品種を育てることをいいます。たとえば台木には病気に強く、よく樹液を吸い上げる木を使い、穂木には果物がなる木を接ぎます。そうすると、台木の良さをもった穂木が成長するのです。
例えば、サクランボのように1本では実がならない「佐藤錦」と「紅秀峰」を接げば、佐藤錦と紅秀峰が1本の木で実ります。
この多品種接ぎ、実は果樹農家では普通に行われていて、梨、桃、サクランボ、リンゴ、イチジク、ぶどう、柑橘類、キウイなど、同じ系列の果樹同士ならほとんど可能です。
さて、多品種接ぎ木苗(ダブルプランツ)の入手方法ですが、インターネットで探すのがおすすめ。ホームセンターや種苗店などにはあまり置いていません。
家庭菜園プロによるワンポイントアドバイス
家庭菜園初心者の方は、暖地桜桃を鉢植えで栽培するのがおすすめ。
大ぶりでジューシーなサクランボを育てたい方は、難易度は上がりますが、佐藤錦などの甘果桜桃の栽培に挑戦してみてください。多品種接ぎの苗(ダブルプランツ)が見つかれば是非とも購入を!
それではまた!