柚子(ゆず)の育て方|プロが教える家庭菜園

柚子(ゆず)の育て方・栽培のコツ|プロが教える家庭菜園

爽やかな香りのよい皮が、料理に心地よい”柚子”。

果実はそのままだと酸っぱくて食べられませんが、砂糖を加え、柚子ジャム、柚子茶、柚子ドリンクにしたり、柚子胡椒、柚子味噌、柚子酒、柚子ぽん酢など色々なものに利用できます。

まるごとお湯に入れる“柚子湯”なんかも冬至の風物詩ですよね。

栽培した柚子のレシピ:柚子(ゆず)の育て方・栽培のコツ

栽培した柚子のレシピ:柚子(ゆず)の育て方・栽培のコツ

まるごとお湯に入れる“柚子湯”。冬至の風物詩。


今回は、そんな柚子の育て方栽培方法のコツについて、家庭菜園のプロが解説します。

最近は4年くらいで実がなる”柚子”

柚子を表すことわざに「桃栗3年柿8年、梅は酸い酸い13年、梨はゆるゆる15年、柚子の大馬鹿18年」とか「桃栗3年、柿8年。柚子は9年でなりさがる。梅ウメは酸いとて13年」とあるように、昔は柚子がなるまでに9年〜18年もかかると言われていました。

しかし、それは種から育てた場合(実生苗/みしょうなえ)です。

今では、苗販売店で着果が早くなるように、接ぎ木をした苗(接ぎ木苗)を用意してくれています。

たった3~4年で実がなりますので、家庭菜園でも栽培しやすくなりました。

長い年月をかけて品質のよいものが残った”柚子”

柚子(ゆず)の特徴

柚子の歴史は古く、原産地は中国の揚子江(ようすこう)上流域といわれています。

日本にはいってきたのがいつ頃かははっきりとしていませんが、飛鳥時代(あすかじだい・592年~710年)には薬用として栽培されていたという記録が残っています。

その後各地で栽培がはじまり、東北以北を除く全国に広がっていきました。

現在「柚子(本柚子/ほんゆず)」は、長い年月をかけて各地の地形や気候等にあわせて変化し、品種にはその地方の名前や見つかった場所の名前がついています。

今販売されているのは、品質のよい徳島県木頭(きとう)地方で育てられていたもの(木頭柚子)が多いです。

柚子の種類:鬼柚子はザボンの仲間

柚子の種類。鬼柚子

実の小さい“花柚子(はなゆ)/姫柚子(ひめゆず)”や、逆にすごく大きくゴツゴツした“鬼柚子(おにゆず)/獅子柚子(ししゆず)”というものがありますが、いずれも“本柚子”とは別の品種です。

“花柚子”はそれでも本柚子に近い品種ですが、“鬼柚子”に関しては、柚子という名称がついていても、実は九州名産の“文旦(ぶんたん)”や“サボン”の仲間です。

皮と実の間に厚く白い綿状のもの(ヘスペリジン)があり、実は意外と小さく酸味も少ないですが、かといって甘みもほとんどないので生食には向きません。

柚子の仲間としては、カボス(臭橙)やスダチ(酸橘)、シークワーサーなどがあります。

柚子(ゆず)の栽培時期

柚子(ゆず)の栽培カレンダー:育て方・栽培のコツ

柚子の植えつけは、3月~4月頃に行います。

接ぎ木苗の場合は結実まで3~4年です。

収穫は10月〜12月に行います。

ミカン科の果樹で、耐寒温度がマイナス7℃あり、柑橘類としては平野部ならば、かなり北の地域まで栽培できます

北限といわれているのが岩手県の陸前高田市で、”北限のゆず”としてブランド化されています。

柚子の栽培地域・栽培時期:北限のゆず

苗・用土の準備:大粒でトゲのない品種がおすすめ

ホームセンターなどでは多くの場合、トゲのある“木頭柚子”や種のない”多田錦(ただにしき)”、実のなり始めが早い“山根柚子(やまねゆず)”が多く販売されていますが、トゲなしの品種が置いてあれば、そちらをおすすめします

また、用土ですが、柚子は弱酸性の土を好みます。

日本の場合、土は弱酸性になっている場合が多く、庭土に腐葉土を多めに入れることで保水性をよくすれば、それで構いません。

コンテナ栽培も可能です。コンテナ栽培の用土には市販の果樹用の土を用います。

柚子(ゆず)の接木苗を探す

柚子の植え付け・仕立:横に広がるように樹形を整える

柚子の植え付けは3月~4月頃に行います。1年目の苗は棒状に伸びていて(棒苗)、枝はまだついていません。

棒苗は、根元から30~40cmのところで切り詰めて植えつけます。

これは低い位置からしっかりした枝を発生させ、実つきをよくするためで、必ず実施してください。倒れないように支柱を立てると安心です。

枝が伸びている2年目以降の苗はそのまま植えつけます。

 

仕立ては開心自然形仕立(かいしんしぜんけいしたて)といって、骨格となる枝(主枝)を3本を残して、他の枝は根元から切り取ります。

上へはどんどん伸びるので、作業・管理がしやすいように、主枝はできるだけ横に広がるようにひもなどで誘引してください。

開花・受粉:人工授粉は必要なし

開花した柚子の花:柚子(ゆず)の育て方・栽培のコツ

開花の時期は5月頃です。

温州みかんなどと同じように白い花弁が5枚、真ん中に大きな雌しべ、雌しべの周りに雄しべが密集しています。

また、柚子は自家和合性(じかわごうせい)で、ハチやチョウの力を借りて自分の花粉で受粉します。人工授粉も必要ありません。

摘果:幼木以外は摘果の必要なし

幼木以外は摘果の必要なし:柚子(ゆず)の育て方・栽培のコツ

果樹園芸では結実が多すぎる時には、まだ小さい内に間引いておきます(=摘果)。

しかし、柚子はそれほど多く着果しないため、5年以上たてば摘果(てきか)の必要はありません

ただし、3〜4年目の幼木の場合、実をつけすぎると木を弱らせてしまいます。また、翌年の実つきも悪くなるので適度に摘果します

摘果:幼木以外摘果の必要なし

また、豊作と不作を1年ごとに繰り返す隔年結果(かくねんけっか)する果樹なので、よく実った次の年に実が少なくても心配はご無用です。

収獲:収穫は年内いっぱいまでに

柚子(ゆず)の収獲:収穫は年内いっぱいまでに

柚子の収穫は、10月頃から始まります。10月頃になると緑色がほとんどなくなり黄色に変わります。

一度にいっぱい収穫しても、近所にお裾分けしたとしても生食できないため、まあ使い切れません。

12月頃までは品質もよく保たれていますので、少しずつ穫って楽しみましょう。ただ、翌年まで放置して多くの実をつけたままだと次の実つきが悪くなるので注意してください。

 

また、多くの柚子には堅く長いトゲがあります。実の収穫や剪定時には長袖・手袋が必須です!

剪定:時期や仕方に少しコツがいる

柚子は剪定が重要です。放っておくと木が10mにもなってしまい、収穫が大変だからです。

ただし、あまり強い剪定をするのはNG。

伸びきった冬に一気に切ると、翌年実つきが悪くなってしまいます。

柚子の剪定の仕方

剪定の時期手順が少しだけややこしいので注意です!

手順①:10月頃に、上へ伸びる実のついていない今年出た枝を切り詰めます。

手順②:3月~4月頃には、風通しがよくなるように間引き、横に伸びすぎている枝を少し切り詰めます。この際、前年に延びてきた横に広がる枝は実がつきますので、必ず残しましょう。

肥料:施肥は年に2回

肥料は3月に元肥(もとごえ)、9月に追肥(ついひ)を施します。肥料は果樹対応の有機配合肥料か一般的な化成肥料です。

病気・害虫:カミキリ虫は枯らしてしまうので要注意

柚子は病気に強い果樹です。

病気に関しては何もしなくて構いませんが、もし病気が出たなと思ったら苗を購入した販売店などに相談してください。

害虫はいろいろいますが、最も気をつけるのが、カミキリ虫です。幼木の場合、幼虫が木の芯に入り込み枯らしてしまいます。見つけ次第捕殺してください。

また、アゲハチョウは葉っぱが大好きです。幼木だと幼虫(イモムシ)で葉っぱがなくなってしまうので、やはり捕殺してください。ある程度大きくなった木は、枯らすことはないので放っておいても大丈夫です。

家庭菜園のプロのワンポイントアドバイス

柚子で作ったゆず酒

柚子はあまり手をかけなくても育ち、実が穫れる果樹ですが、大木になるので剪定は工夫が必要です。

また、剪定が強すぎても実つきが悪くなる原因になるので注意してくださいね。