うなぎの蒲焼の薬味として、よく知られる「山椒(サンショウ)」。
ほんの少量でも、ピリリとしたシビれる辛さが料理を引き立てます。
今回は、そんな山椒を家庭菜園で育てる方法を家庭菜園のプロが解説していきます。
山椒の特徴:食べ物をよりおいしくしてくれる山椒
山椒の葉は、特に若芽が緑鮮やかで、クセになる独特の香りがあります。
“木の芽(このめ)”といわれ料理のつけ合わせや、すりつぶした葉を味噌などと合わせて食材とあえる“木の芽あえ”など、春の料理には欠かせません。
花は、“花山椒(はなざんしょう)”といって蕾をそのまま、あるいは漬物として利用されます。山椒独特の辛みは少なく、優しく香ります。
(ちなみに、中国の辛〜い調味料“花椒(ホワジャオ)”とは全く別物です。)
実は独特のしびれるような辛みと香りがあります。
緑色の若い実は“実山椒(みざんしょう)”といい、ちりめん山椒、佃煮や醤油煮など、飯のお供として最高な味わいです。
赤く熟した実は、乾燥させた皮の部分だけをすりつぶし、“粉山椒(こなざんしょう)”となります。七味唐辛子の一味として、またウナギの蒲焼きには欠かせません。
しびれる辛さは麻酔効果。食べ過ぎには注意
また、山椒は木の皮も漢方薬として利用されており、さまざまな健康効果があります。
あのしびれるような辛さはサンショオールといいます。
胃を丈夫にして腸の働きを抑える効果とともに、大脳を刺激して内臓器官の働きを活発にし、消化不良の改善に効果があるといわれています。
ただし、サンショオールには麻酔と似た作用があるので、食べ過ぎには注意してください。
山椒は基本的に雌雄異株
一点、山椒栽培で注意しておくべきことがあります。
山椒は、基本的には雄木(おぎ/雄株)と雌木(めぎ/雌株)があることで、雄木には花粉のあるおしべだけがついた雄花が、雌木にはめしべがついた雌花しか咲きません。
つまり雄木だけだと花は咲きますが、実はなりません。反対に雌木には実がつくのですが、花粉がなく雄花がないと受粉しないのです。
山椒の栽培では花も実も楽しみたい場合は、雄木、雌木の計2本植える必要があります。
1本で実がなる「朝倉山椒」がおすすめ
基本的に山椒栽培は2本必要と言いましたが、1本で実がなる品種もあってこちらが断然おすすめ♩
例えば、“朝倉山椒(アサクラサンショウ)”という品種の山椒は1本でも実がなり、山椒特有の鋭いトゲがほとんどありません。
また、“朝倉山椒”から生まれた“ぶどう山椒”というものも1本で実がたくさんなります(こちらにはトゲがあります)。
山椒の栽培時期
「山椒(さんしょう)」は、ミカン科の低木です。
最大産地はミカンでもおなじみ”和歌山県”です。
山野に自生し春に花が咲き、小さな丸い実をつけます。晩秋には落葉し、翌春に芽を出します。
寒さには強く、平地なら北海道でも育つといわれています。
家庭菜園では、12月~3月に苗を植えつけます。
3月頃から新芽が顔を出し、4月には緑の新葉と真ん中に花芽が見えてきます。
収穫時期は好みによって、4月(新葉・花)、6月(緑色の未熟果)、10月(熟したした赤い実)まで可能です。
植え付け:植え替えると枯れる可能性大
山椒の苗は、12月~3月ごろに水はけのよい場所に植えつけます。
山椒は、根の張り方が浅く弱いので、植え替えると枯れる危険性があります。基本的に一度植えたら植え替えは最小限にしましょう。
露地の場合は最初から植え替えをしないでいい場所を選ぶこと、コンテナは少し大きめのものを使用することを守ればOKです。
露地栽培での植え方
土はあまり選ばないので、庭土に腐葉土を3~4割ほど混ぜ込みます。
直射日光の当たらないような半日陰に、大きめの植え穴を掘り、苗を植えます。
コンテナ栽培での植え方
コンテナの場合は、市販の果樹の土が使い勝手がいいです。
大きめの深さが十分にある鉢(7号鉢以上がおすすめ)を準備し、鉢底石を敷いてから苗を植えていきます。
根についた土を崩さないよう、慎重に植えていきます。
水やり
コンテナ栽培の場合は、たっぷりと水を与えましょう。
山椒は水が不足しやすく、水やりの目安としては”土が乾いたら与える“です。特に暑い夏には注意が必要です。
露地の場合は、特に水やりの必要はありませんが、夏は根元にワラを敷いて乾燥対策をするとGood。
開花・受粉・収穫:雄木には実ができないので注意
山椒の新芽は、3月頃から顔を出し、4月には緑の新葉と真ん中に花芽が見えてきます。
“朝倉山椒”は1本植えるだけでいいのですが、“朝倉山椒”系のもの以外は、雌木は自分自身では受粉ができず、近くに雄木を植える必要があります。
受粉すると雌花の方に実ができます。
収穫は必要に応じて4月(新葉・花)、6月(緑色の未熟果)、10月(熟した赤い実)までできます。
トゲがある場合は大変危ないので、トゲを切り落としておきましょう。切り落とすことで木に悪い影響は特にありません。
剪定:高くならない、広がりすぎない剪定を
山椒の剪定は、葉が落ちた12月~3月はじめ頃に行います。
果樹としては低木なのですが、それでも3mくらいになり、横にも相当広がります。
そこで剪定は、枯れた枝・上に伸びる枝・横に広がる枝・混み合っている部分に行うのが、コンパクトにまとめる秘訣です。
枯れた枝は枝元から、上に伸びたり横に広がったりする枝は、枝先の1/3程度を切り詰めてください。ただし、その年に伸びた枝(新梢)は、翌年実をつけますので切らないでください。
肥料:あまり要らないが、夏と冬の2回
山椒は自生で育つ果樹なので、肥料はあまり必要ありません。
しかし、弱っているなと思った場合は、7月~8月(礼肥/れいひ)、2月から3月(元肥/もとごえ)に油かすなどの有機肥料を2回ほど与えればOKです♩
害虫・病気:アゲハチョウの幼虫は山椒が大好き
山椒栽培では、病気や害虫もあまり気になるものはありません。
ですが、なぜかアゲハチョウの幼虫は山椒の葉が大好きなようで、むしゃむしゃ食べています。
3年目くらいまでの若い木だと葉っぱがなくなってしまいます。
見つけ次第、退治してください。
また、防虫ネットで木を覆っておくと予防になります。
山椒の増やし方:挿し木で増やせる山椒
山椒は、挿し木(さしき)で増やすのが一般的です。
挿し木は、真夏を除いて6月~10月頃が適期です。
山椒の増やし方の手順
手順①:若い枝を10cm切り、葉(葉のまとまり)を上から3つほど残し、すべて切り落とします。
手順②:枝を水に1時間ほどつけ、水はけがよく、かつ保水力もある土(たとえばバーミキュライト)に挿します。この際、挿し穂の切り口に、”挿し木用の発根剤”を少しつけておくと成功率が高くなります。
手順③:水を切らさないように日陰で管理し、芽が出たら大きめの鉢やトレイに移します。根の周りを崩さないようにしてください。
トレイで育てる場合は、なるべく植え替えは避けたいので、そのまま育つような大きめのトレイにすることをおすすめします。
家庭菜園プロのワンポイントアドバイス
・1本で実がなる品種(朝倉山椒など)を選ぶ
・コンテナ栽培の場合、最初から大きなもの(7号以上)に植える