揚げ物には必須。レモネード・レモンピューレ・レモンカードなどお菓子作りにも大活躍の果物「レモン」。
1本あると便利な果樹で、家庭菜園でも大変人気があります!
また、国産レモンはほとんど流通しておらず、手に入りにくいです。この機会にご家庭で育ててみてはいかがでしょうか?
今回は、家庭菜園のプロが「鉢植えでもできるレモンの育て方・栽培方法のコツ」を解説します。
初めての方でも失敗せずにおいしいレモンを収穫できますよ♩
なんと9割が輸入のレモン。国産はレア
レモン(檸檬)は、ヒマラヤ山脈の麓、インドのアッサム地方が原産で、地中海沿岸諸国、特に、イタリアで栽培が盛んになった果物です。
気候的には比較的温暖な地域で育ち、柑橘類としては寒さには弱めの果樹です。
耐寒温度はマイナス3℃で、日本では関東以南の太平洋、瀬戸内海沿岸の平地が栽培可能エリアとなっています。
レモンが日本に入ってきたのは1873年(明治6年)で初めて栽培されたのは静岡県の熱海です。その後西日本に広がり、特に地中海地方と気候が似ていた広島県の瀬戸内海に浮かぶ島で植えられてきました。
そして現在、日本で収穫されているレモンは約5,500トンで、輸入は5万5,000トン。実は国内生産量は輸入量のたった1割しかありません(参考:2019年農林水産省の統計)。
輸入レモンは消毒や残留農薬、防カビ剤という問題もあり、ちょっと心配になる方も多いはず。
レアな”国産レモン”が手軽に味わえるというのも家庭菜園の特権ですね♩
レモンの品種:おすすめ品種は「リスボン」
レモンの品種には、明治・大正時代に海外から導入された「ユーレカ」「リスボン」「ビラフランカ」などがあります。
果実にはそれほど大きな違いはありませんが、「リスボン」は耐寒性が強く育てやすい品種です。特に関東地方ではおすすめです。
また、「マイヤーレモン(菊池レモン、サイパンレモン)」というものもおすすめです。
オレンジなどの甘い柑橘類との交雑種(違う品種間の交配によってできた品種)で、酸味が弱く丸かじりもできる品種です。
用土:用土は弱酸性、有機質が大切
レモンは弱酸性から中性の土壌を好みます。
プランターや鉢植えで栽培する場合は、市販の「果樹の土」が便利でおすすめです。
庭に植える場合、水はけを良くし栄養のある土にするため、庭土に腐葉土を多く加え混ぜておきます。
レモンの植え付け:深植えせず、風当たりの弱い場所で栽培
レモンを含む柑橘系は、庭植えだけでなく、鉢植えでも手軽に栽培できるので、家庭菜園でも人気があります♩
植え付け用に用意する容器のサイズは、15号鉢(直径450㎜)ぐらいがおすすめです。購入時の鉢の2〜3倍ぐらいの大き目サイズが目安です
植え付けの時期は3月から4月頃。極寒の時期は避けてください。
さて、ホームセンターやネットで購入した苗は、1年目は幹が1本だけの棒状(棒苗)になっています。
この棒苗を、鉢植え栽培の場合は25~30cm、庭植えの場合は50cmに切り詰めてから植えます。
切り詰めることで、根元に近いところから勢いのいい枝を出し、横に枝を伸ばすことができ、結果管理が大変しやすくなります。
鉢植え栽培の場合は、最大でも高さ1.5m程度にしないと管理が難しくなります。
植える際は、色が変わっている「接ぎ木部分」より上には土をかけないようにして、深植えは避けましょう。実つきが悪くなる恐れがあります。
レモンは、日当たりを好みますが、風があまりあたらないところを選んで植えてください。風あたりが強いと落葉したり、寒風があたると枯死したりすることがあり、病気になりやすいからです。
レモンの木の仕立て:開心自然形仕立て。低い樹形を目指す
仕立ては、鉢植え・庭植えとも同様、ある程度自由な樹形にする「開心自然形仕立て」という方法がおすすめです(上の画像参照)。
棒苗から出た枝のうち骨格となる3本を残し、あとは枝の付け根から切り取ります。
3~4年目からは、低い樹形にすることを目指し、上に伸びる枝や横に伸びすぎた枝を1/3程度カットし、古い枝や混み合ったところを間引きます。
花芽:枝全体につく花芽
レモンはほかの柑橘類とは違って、花芽は枝全体につきます。
また前年に伸びた枝だけでなく、実のついた枝などにもつき、1年ごとに豊作不作がある隔年結果はほとんどありません。
ただし、寒さや塩害、害虫など何らかの理由で葉が落ちてしまうと、そこには葉芽が出てきますが花芽はつきません。
開花:何回も咲くレモンの花
レモンは、3月下旬頃から紫がかったピンク色の丸いつぼみをいっぱいつけ始め、5月頃開花します。
白いかわいい花ですが、1つ1つよく見ると、真ん中にめしべがついているものと、おしべだけの花があります。
めしべがついているものは正常な花ですが、ついていないのは「不完全花」と呼ばれる、実がならない花です。
5月頃咲く最初の花はこの不完全花が多いため、咲いている全ての花の数ほどは実はなりません。
そしてレモンの木のおもしろい特徴ですが、5月に開花してからも9月頃まで何回も花を咲かせます。
もし、5月に不完全花が多く、着果が少ないという場合でも、6月以降の花が実になるのであまり心配しなくとも大丈夫です。
受粉:鉢植えでの栽培は人工授粉が必要
本来、レモンは自家受粉、しかも受粉率が高い果樹なので人工授粉の必要はありません。
ただし、鉢植え栽培の場合は人工的に受粉させる必要があります。
6月以降は花の数が少なくなる傾向がありますので、5月頃に咲く花で人工授粉してください。
レモンの人工授粉は非常に簡単で、筆などを使って、めしべとおしべあたりをくるくると撫でてやればOKです。
摘果:葉果比を守り、必要があれば摘果
それぞれの果樹には、実1個に対して必要な葉数(葉果比/ようかひ)というものが決まっています。
レモンの木の適切な葉果比は25~30枚です。
鉢植え栽培の場合は、実をつけすぎると枯れる可能性があるので、葉果比よりも実がたくさんついている場合は摘果しましょう。
庭植えの場合、ほとんど摘果の必要はありません。夏果や秋果がつきすぎて葉数を確保できないという場合は摘果してください。
レモンの収穫時期
レモンは、”緑色の状態でも”ある程度大きくなったら酸味が出てきます。
早ければ10月の初旬から収穫できます。徐々に黄色くなり、あのきれいな黄色になるのは11月下旬頃からです。
一度に取らなくても年内なら熟しすぎることはないでしょう。必要なときに大きいものから順番に収穫すればOKです。
特に、7月頃(遅めに)受粉した実はまだ小さく、木につけたままにしておいて構いません。
2月頃でもまだ緑がかっているものもあり、4月頃までたっぷりと楽しめますよ♩
レモンの木の剪定:手の届く範囲に剪定
レモンは樹勢が強く、放っておくと5mにもなる大きな木です。
管理しやすくするためにも、2~3月頃に伸びすぎた枝を切り詰めて樹形を整える作業(剪定)を行います。
花芽が枝全体につくので、手の届く範囲内で切り詰めます。特に勢いよく上へ伸びる枝は思い切って切り詰めましょう。
鉢植えでの栽培は、最終的に1.5mぐらいの高さにします。
レモンに与える肥料の時期
レモンは、肥料切れによって落葉や実の発育不足を起こすので、施肥は大切です。
鉢植えでの栽培では、3月・6月・10月に、有機質の多く含まれる有機配合肥料を根元から少し離れた部分にまいてあげましょう。
庭植えの場合、有機質の多く含まれる肥料を元肥(もとごえ)として3月、追肥として6月・8月に与え、速効性のある化成肥料を11月に施します。
レモンの木の植え替え
鉢植えでの栽培の場合、2年に一度くらい一回り大きなものに植え替えましょう。
庭植えの場合は植え替えは不要です。
寒さ対策:寒さ対策を万全に
レモンはマイナス3℃以下になると、木が枯れる、実がスカスカになるなどの問題が生じます。
鉢植えでの栽培では、極寒期は室内に取り込むか、寒冷紗で木全体を覆うと、レモンの木を寒さから守ることができます。
庭木の場合は幼木の場合は寒冷紗が役に立ちますが、大きくなった木は被害がないように祈るしかありません。しかし、木全体が枯れることはまれで、一部が枯れても春になれば残った部分から花芽が出てきますから安心してください。
レモンの病気・害虫:病気防止に風と雨対策を
レモンは、他の柑橘類より病気にかかりやすいので注意が必要です。代表的なものは「かいよう病」と「黒点病」です。
レモンの病気:かいよう病
かいよう病は、表面に大小の斑点ができる病気で、風などで運ばれてきた病原菌が傷に入り込み、発病します。
レモンにはトゲがあり、実が風に揺れて刺さり傷つくことが多いので、対策としてはトゲを切り取っておくのが第一です。
葉にかいよう病が見られた場合は、すぐに切除してください。
レモンの病気:黒点病
黒点病は、実の付け根付近にアザのような茶褐色の模様ができる病気です。
枯れ葉で越冬した菌が4月頃胞子を飛ばし、それが雨でかかると発病します。
鉢栽培では、雨のかからない軒下に置くなどすると発病が避けられます。また、鉢内の枯れ葉は掃除するといいでしょう。
レモンの害虫
害虫はミカンハモグリガ、チャノホコリダニ、ミカンサビダニ、カイガラムシ類、それにカミキリムシ、アゲハチョウの幼虫(アオムシ)などがいます。
カミキリムシ、アゲハチョウの幼虫は見つけたら捕殺します。
その他の害虫は被害が大きければ適応する薬剤を散布しましょう。薬剤や散布方法はホームセンターや種苗店に相談してください。
家庭菜園プロのワンポイントアドバイス
レモンは花が何回も咲き、実がつきやすい果樹です。
そんなレモン栽培のポイントですが、「寒さや風、病気対策を万全にすること」です。
鉢は春から秋は軒下に、冬は室内に入れるのがベストです!