家庭菜園で人気の果樹「ぶどう」。
もぎ取って食べるだけでなく、ワインの原料でもあるため、世界中で品種改良が盛んにされているフルーツです。その数、なんと1万種以上。
ぶどう園だと棚にして育てますが、家庭菜園だと手すりや塀にはわせたり、コンテナでも栽培できますよ。
また、気候に合った品種を選べば、沖縄から北海道まで栽培が可能です。
今回は、家庭菜園のプロによる、初めてでもできるぶどうの育て方をご紹介します。
大粒の巨峰やシャインマスカットをあなたも収穫してみてくださいね♩
ぶどうの品種選び:大粒な品種が人気
小粒なぶどうの代表が「デラウエア」
大粒なものには「マスカット・オブ・アレキサンドリア」「巨峰(きょほう)」「藤稔(ふじみのり)」「ピオーネ」があります。最近のトレンドは皮も食べられる「シャインマスカット」ですね。
中間的なものに「ナイアガラ」や「マスカットベリーA」「キャンベル・アーリー」が有名です。
家庭菜園向きのぶどうって?
「マスカットベリーA」「デラウエア」「巨峰」「藤稔」。
そして意外にも「シャインマスカット」も家庭菜園向きです!
家庭菜園向きのぶどうは、米国種と欧米交雑種です。欧州種は難易度が高めなので、おすすめはしません。
欧州種はなんといっても、“ぶどうの王様”「マスカット・オブ・アレキサンドリア」。最高級品種として君臨していますが、病気に弱く栽培が難しいのが欠点です。
米国種の代表は「マスカットベリーA」「キャンベル・アーリー」「ナイアガラ」などで、病気に強いという特徴があります。
欧米交雑種は、米国種と欧州産を掛け合わせることによって、”おいしい“かつ”病気に強い“品種に改良されたものです。両方のいいとこ取りをしたものです。
代表種は「巨峰」「ピオーネ」「サニールージュ」「シャインマスカット」です。
苗・用土の準備
ぶどう栽培は”種”からではなく”苗“を購入してきて始めましょう。
また、用土は庭土に腐葉土を混ぜ込めばOK。
プランターの場合は市販の果樹用の土が最適です。
植え付け・仕立:「垣根仕立て」がおすすめ
苗の植え付け時期は11月〜3月頃で、最も寒い時期は避けた方がいいでしょう。
苗は30〜60cmくらいにカットし、日当たりのよい場所に植えつけます。
ぶどうの仕立て方法は「垣根仕立て」と「棚仕立て」がありますが、家庭菜園初心者の方は、「垣根仕立て」が管理がしやすくておすすめです。
垣根仕立て
「垣根仕立て」とは、立てた支柱に張ったワイヤーで垣根をつくり、 それに沿ってブドウを植え、伸びた枝をワイヤーに結びつけて伸ばしていくという仕立て方です。
テラスや塀を利用する方法もあります。広い面積を使わずに栽培でき、高い棚での作業がないのでおすすめです♩
2年目以降、低い位置のしっかりした枝を2本、左右に誘引し、それ以外はすべてカットします。
棚仕立て
一方、「棚仕立て」は支柱と針金で垂直に組んだ、水平な棚に枝を伸ばす方法です。
「棚仕立て」で育てたい場合は、2〜4畳ほどの棚を用意します。ベランダのひさしやガレージ上なども利用することが可能です。
2年目以降、棚に届いていない主枝以外の枝はすべてカットし、棚に届いた主枝から出た枝を2本、左右に誘引します。
これで仕立ての基本形はできあがりです。
芽かき
春先に枝が伸び始めたときに、1つの芽から2本以上芽が伸びてくることがあります。
その場合、一番大きい芽を残し、残りの芽は摘み取ります。この作業が「芽かき」です。
若い芽は根元が折れやすいので、必ずハサミを使って行ってください。
誘引
伸びた枝は誘引(ゆういん)といって、棚に結びつけて、今後ツルが伸びる方向を決めます。
できるだけ交差しないよう等間隔で伸ばすようにしてください。
つる取り:巻きづるは伸びる前に切り取る
ぶどうには巻きづるがあるのですが、邪魔になることが多いので、つけ根から切り取ります。
摘芯・整房:花ぶるい防止に必須
ぶどうの花は、100個以上の花蕾(からい)が集まって花房(かぼう)を形成しているのですが、そのままにしておくと“花ぶるい”といって、自ら花を落としてしまいます。
特に「巨峰」などの大粒のぶどうに起こる現象で、ほとんど花を落としてしまうこともあります。
この花ぶるいを防ぐ方法は2つあり、摘芯と整房です。
摘芯
1つ目は摘芯(てきしん)。
新梢(しんしょう/今年伸びた枝)は勢いよく伸びていきます。放っておくと枝に栄養がいってしまい花ぶるいを起こします。
そこで、20節くらいを残してその先を切り詰めます。
整房:大粒品種は整房して果実を大きく育てる
花ぶるいを防ぐもう1つの方法が整房(せいぼう)です。
不要な花蕾を切り取ってしまい、花蕾の数を制限します。
4月〜5月の花が咲く直前に、花房の先から15段を残し、ほかの花蕾はすべて切り取ります。
花房のつけ根の部分にそこそこ大きな花蕾がついているのですが、もったいないと思わず、切り取ることが大切です。
整房をしておけば、この先果実が大きく育ちますよ♩
ちなみに、「デラウエア」などは整房の必要はありません。
受粉は自然任せで何もしなくてOKです。
摘粒・袋かけ:大粒ぶどうは果実を間引くとサイズUP
摘粒(てきりゅう)とは、果実を間引くことです。
6月頃の果実がある程度大きくなってから行います。
果実間に余裕ができてさらに大きくなりますよ。
特に、摘粒は大粒ぶどうに有効で、たとえば「巨峰」だと30粒にすると市販されているような立派な形になります。
摘粒が終わった後は、袋かけをします。
ぶどうは雨や虫に弱く、病気になりがちなので、特に大粒ぶどうの場合は必ず行ってください。
剪定・皮はぎ:冬に皮をはいで害虫を駆除
剪定(せんてい)は12月〜2月に行います。
ぶどうは枝の発生が多く、秋には相当混み合った状態になっています。
・長く伸びた枝を切り詰める
・混み合っているところを枝元から間引く
切り詰めはぶどうの種類によって異なります。
例えば、巨峰は“枝を少し長めに残して、シャインマスカットは短くします。
育てる品種についてインターネットで調べるか、種苗店の専門スタッフなどに聞いてみてください。
2月頃には古い皮をはぎます。皮の下には害虫の卵や幼虫が冬眠している可能性があるので、重要な作業です。
肥料:元肥をしっかり!
肥料は、有機配合肥料に堆肥などの有機肥料を加えて、2月〜3月に元肥(もとごえ)、9月〜10月に礼肥を施してください。
比率は元肥を多く、礼肥は少なくします。礼肥はなくても構わないレベルです。
↓こんなものもあるので、試してみてはいかがでしょうか?
病害虫・農薬:食酢は病気予防に有効
ぶどうは、他の果樹に比べても病害虫の被害が多発します。
病気としては「黒とう病(実に黒い斑点ができる)」「ベと病(葉がまだらに茶色く変色し、やがて実にもうつる)」「うどんこ病(白い粉をふく)」などがあり、一度かかるとすべてが台無しになってしまいます。
これらの病気の原因は主に雨なので、袋かけが大切です。
予防には市販の農薬もありますが、農薬を使いたくないという方は、30倍程度に薄めた食酢(穀物酢)が有効です(完全には防げませんが)。
また、葉を食べ尽くしてしまう「コガネムシ」や幹の中に入り込んで芯を食い荒らす「カミキリ虫の幼虫」などにも要注意です。
春〜初夏は、よく木を点検してください。
コガネムシは朝早く木を揺すると眠っている虫がバラバラ落ちてきます。それを回収するのがベストな対策法です。
また、細かい木くずが出ていてその上に穴が開いていたら幼虫がいます。対策としては、かき出す、または細い針金などで潰しましょう。
鳥やハクビシンなどの獣類にも要注意です。いざ収穫しようとしていた矢先に食べられてしまうので、頭にくることも(笑)…
ジベレリン処理:種なしぶどうにできる!
やっぱり、種がないぶどうって食べやすくていいですよね。
「ジベレリン」という植物ホルモンを使えば、”種なしぶどう”にすることができます。
「ジベレリン」は、実を大きくしたり、実つきをよくしたりもするので、ぶどう農家はほぼ100%使用しています。
使用方法、作業する時期、回数は品種によって違っています。それぞれの溶剤に入っている説明書で確認してください。
もちろん、用法を守れば人体には影響がないと、農林水産省が認めている薬剤ですよ。
プロのワンポイントアドバイス
家庭菜園果樹の王様”ぶどう”。ぶどう栽培成功の秘訣は“お世話”です。
1年中常に手をかけることがあります。特に大粒のぶどうは手がかかります。
ですが、大きな実にかぶりついたときのおいしさは格別ですよ♩