「不老長寿の果物」とも呼ばれ、栄養満点のフルーツ”イチジク”。
食物繊維やアントシアンも豊富で、女性にとってもうれしい美肌効果もあるとか!
そのまま食べてもいいし、コンポートやジャムにしたり、オシャレなお菓子作りに使っても色鮮やかで楽しめます♩
そんなイチジクは、大きく育ってしまえば世話はかかりませんが、苗から育てる際は、少々気をつかう必要があります。
そこで今回は、初めてでも失敗しない「イチジクの育て方・栽培方法」を家庭菜園のプロが解説していきます。
イチジクの3つのタイプ
ます、イチジクには3つのタイプがあります。①夏果専用種、②夏秋兼用種、③秋果専用種、の3つです。
①夏果専用種は、その名の通り夏に熟して穫れるタイプです。小さな果実が前年から枝の先の方にできはじめ、そのまま越冬して春に肥大します。収穫は6月から7月頃です。
②夏秋兼用種は、夏果と秋果の両方が穫れ、お得感いっぱいのタイプです♩家庭菜園に向いていますが、仕立て方に少し工夫が必要です。
③秋果専用種は、その年の春の新芽(新梢/しんしょう)に実が形成され、9月~10月頃に熟します。実は枝全体に分散してつきます。
おすすめは”桝井ドーフィン”という品種
イチジクの品種は数多くありますが、日本で最も栽培されているのが「桝井(ますい)ドーフィン」というものです。
色は熟すと濃い紫になり、夏果は200g、秋果でも130g前後にまで成長する大きな果実です。
夏秋兼用(②)タイプで、ホームセンターなどでは単に“ドーフィン”として販売されている場合もあります。
通販では他にもさまざまな品種が販売されていますので、その品種の説明書きをよく読んで、育てたい品種を選んでもOKです♩
アラビア半島で誕生したイチジク
イチジクの原産はアラビア半島南部で、日本へは17世紀前半に中国から長崎に伝わってきたといわれています。
日本の在来種である“蓬莱柿(ほうらいし/秋果専用種)”という品種は、最初に渡来したものの改良品種で、今でも多く植えられています。
アラビアという亜熱帯の落葉植物なので、基本的には関東以西の暖かい地域が栽培適地ですが、蓬莱柿などの品種はマイナス10℃でも育つため、寒冷地にお住まいの方でも栽培が可能ですよ。
実の中に隠れているイチジクの花
イチジクは“無花果”と書くように、パッと見、花がないようですが、実の中に存在します。
試しに熟した実を割ってみると数多くのつぶつぶがありますが、まさしくそれが花です。
通常、花は外で咲いて、何らかの方法で受粉し、初めて実(種)になりますが、イチジクは咲かないので受粉できません。
しかし、イチジクは受粉しなくても実ができます。これを単為結果性(たんいけっかせい)といって、ほかに柿などにも見られる、雌花だけで実になる植物の不思議です。
植え付け:なかなか芽が出ないこともあるが大丈夫
イチジクの木はベランダで大きめのプランターや鉢植えなどで育てたり、庭に植えて育てることも可能です。
初心者の方はコンパクトに育てられる、プランターや鉢植えでの栽培がおすすめです。
土壌は中性から弱酸性で、水はけがよい土を好みます。市販の果樹の培養土が手軽です。
イチジクの1年目の苗は、上の写真のように、1本の棒のようです(棒苗)。
長い場合は30~50cm程度の高さに切り詰めて植えます。
植え付け時期は、11月~3月(ただし厳冬期を除く)の期間がベストです。
また、1年目の苗は新しい芽(新梢/しんしょう)がなかなか出てこないことも。でも大丈夫。我慢強く待っていると5月の中旬頃までには発芽します。
もし、そこまで待っても芽が出ない場合は枯れたかもしれないので、棒苗の上から少し切り戻してください。少し水分を含んだ青みのある切り口が出てくれば、もう少しで芽が出てきますよ。
仕立て:方法は2種類
果樹栽培では木をカットしていき、ベストな形にしていきます(仕立て)。仕立て方によって、必要なスペースや作業性・収穫量などが変わってくるので重要な工程です。
イチジクの基本の仕立て方は、自然に任せる方法(開心自然型仕立て/かいしんしぜんけいしたて)と一文字仕立て(いちもんじしたて)の2種類があります。
どのタイプにも適応する「開心自然型仕立て」
開心自然型仕立ては、自然のまま育て、混み合ってきたり大きくなりすぎた場合は、枝を間引くように剪定する方法です。
この方法はすべてのタイプに適合します。冒頭で紹介したドーフィンなんかはこちらの仕立て方がいいでしょう。
基本的には自然のままに枝を伸ばしていく形の仕立てなので、2~3年目は間引く以外はあまりやることがありません。ただ、そのままにしておくと背がどんどん高くなるので、中心となる枝(主枝)は常に目の高さくらいのところで切り詰めます。
横に伸びる枝は、長く伸びた枝の先端を1/2程度切り詰め、同時に混み合ったところや上に伸びる枝を間引きます。ただ、夏果は短い枝(短果枝/たんかし)の先端につくので、短い枝まで切ると夏果がつきません。
作業がしやすい「一文字仕立て」
一文字仕立ては、木を上へ伸ばさずに横へ広げる方法で、収穫剪定などの作業がやりやすい仕立て方です。
庭植えだと横にかなりのスペースが必要で、広い庭がないと難しいのですが、コンテナ栽培では、庭植えほど大きくならないのでそのメリットが最大限活用できます。
注意点としては、一文字仕立ては基本的には秋果専用種のための仕立て方法だということ。夏果専用種にはかなり工夫をしないと使用できません。
一文字仕立ては、2年目に伸びた枝のうち、一番下の2本を残しあとはすべて切り詰めるという、大胆な方法です。
斜め上に伸びる下の2本を、横一文字になるように左右に誘引します。その場合、支柱とか杭などを利用するのですが、一度でやろうとすると枝が折れる危険性があります。新しく出てきた枝(新梢/しんしょう)が伸び始める春から徐々に水平方向に伸ばしていくようにしましょう。
3年目までに形作り、4年目から本格的に収穫
3年目には横に伸ばした枝から上向きに新梢が伸びてきます。
新梢は1本だけ伸ばし、葉を2枚程度残して切り詰めます。もう少し横に広げたい場合は、先端の枝を横に誘引してください。横に誘引した枝は先端から1/2程度切り詰めます。
仕立ての形は3年目までで完成です。4年目以降も新梢は各節に1本だけ、支柱を立てて上向きのクシ状に伸ばします。基本は手の届く範囲で芽を摘みます(摘芯)。秋果は新梢につきます。
イチジクの収穫:夏秋兼用タイプは収穫時期が長い!
イチジクは、大きく成長した果実から順番に熟していきます。
桝井ドーフィンのような夏秋兼用タイプの品種だと、収穫時期は6月~10月です。
”一度に熟さずに長期間にわたって収穫できる”という点でも家庭菜園向きの果樹ですね。
イチジクの剪定:仕立てタイプによって違う剪定方法
剪定(せんてい)は12月~2月のイチジクが休眠している時期に行います。
イチジクは落葉広葉樹なので、冬には枝だけになり、剪定が楽ですよ。
そして剪定の方法ですが、先ほど紹介した仕立て方法によって剪定方法が異なります。
背が高くならないように間引く「開心自然型仕立て」
開心自然型仕立ての場合、剪定のポイントは上へ伸びる枝を切り詰める、混み合わないように間引く、短果枝を残す、以上3点です。
夏果は休眠枝の上から5芽ぐらいまでが実になります。秋果は休眠枝から出てくる新梢につきます。新梢は休眠枝のどこからでも出てきますので、秋果専用種を開心自然型にした場合は、休眠枝をかなり切り詰めても秋果はできますので、5芽くらいを残してカットすると、実が手の届く範囲にできます。
2芽を残し大胆に切り詰める「一文字仕立て」
一文字仕立ての場合は、休眠枝の2芽位を残して上の部分は切り詰めます。
春には残した芽から新梢が伸び実をつけます。夏秋専用種で夏果を穫りたい場合は、休眠枝を数本切り詰めずにそのまま残すと先端部分に実がつきます。
仕立てに関わらず剪定した切り口は市販の切口癒合剤(きりくちゆごうざい)を塗るのがおすすめ。病原菌などの侵入を防げます。
肥料:少しずつ数回に分けて追肥
イチジクは追肥(ついひ)を6月、8月、10月と数回に分けて少しずつ施すと実が大きく育ちます。
肥料は有機配合肥料か普通化成肥料で構いません。元肥(もとごえ)は2月です。
白い液には注意:かぶれるので触らないように
イチジクを収穫したり、剪定したりするとその切り口から白い樹液が出てきます。この液にはタンパク質分解酵素が含まれているので、触るとかぶれます。
触った場合はすぐ洗い流してください。
昔からこの樹液を塗るとイボがとれるといわれていますが、民間療法は危険なので、専門の医者などに相談してください。
病気・害虫:カミキリムシは天敵。見つけたら即捕殺
イチジク栽培では、病気はあまり気にしなくていいでしょう。
害虫はカミキリムシが最大の敵です。
カミキリムシはいろいろな果樹を荒らす困った虫ですが、イチジクはその中でも最も狙われます。
成虫は地際の幹や枝の付け根をかじって卵を生み、幼虫は幹に穴を掘って芯に入り込み木を中から食い荒らします。幼虫は木くずのような糞を外に出すので、木くずを見つけたら幼虫がいます。
近くに穴があるので、中に細長い針金のようなものを入れ、かき出すか押しつぶします。カミキリムシにやられると幼木や若枝は枯れてしまうので、成虫、幼虫とも見つけたらすぐ捕殺しましょう!
家庭菜園のプロによるワンポイントアドバイス
・棒苗は芽がなかなか出てきませんが、我慢強く待ちましょう。
・カミキリムシには注意。見つけたら即捕殺!