家族や親戚に農家がいない方や、きちんと知識を付けてから就農したいと考えている方にとって農業に必要な知識や経験を習得できる場所として「農業大学校」という選択肢があるのをご存知ですか?
今回は、農業の専門学校である農業大学校ではどのようなスキルを習得できるかをはじめ、対象者や学費など農業大学校に入るための基礎知識をまとめてみました。
農業大学校とは?
農業大学校とは、就農を目指す方やスキルアップしたい就農者を対象にした2年制の専門学校で、農業の担い手を育成する機関として全国42道府県に設置されています。
学位を取得するための教育機関である4年制の農業大学とは違って、農業の技術や経営に関する実践的な教育を受けることができるのが特徴です。
対象者:高校卒業程度の学力を有する方
履修時間:2年間 2,400時間(80単位)以上
教科:稲、畑作物 、野菜、果樹、花き、 酪農、肉牛、養豚、養鶏など
研修過程
対象者:農業大学校養成課程卒業生や短大卒業者
履修時間:2年間 2,400時間(80単位)以上(※1年制の学校もあり)
教科:養成部門で学んだ学習内容をさらに深めて高度な農業技術や経営能力を習得
研究課程
対象者:技術・知識の向上を目指す農業者の方や就農を希望する方
履修時間:1日~数週間程度(コースによる)
教科:農業技術、農業機械操作、経営管理、農業体験など各種コースを設置
学校によっても様々ですが、教科は基本的に「稲作」、「畑作」、「果樹」、「畜産」、「農業経営」などに分かれていて自分が学びたい教科を選ぶことができます。新潟県であれば稲作、栃木県ではいちごに特化した学科など特産品によって違いがあるのも農業大学校の魅力です。
実は農業大学校は社会人でも受講可能!
基本的に農業大学校の対象者の条件は、「高校卒業程度の学力を有しているか」のみです。
したがって社会人であっても受講することは可能です。
実際、農業を始めたいという30代の社会人の方が通うこともよくありますよ。
ただし、2年制の養成課程を学びたいと考えている場合だと、どうしても仕事との両立は難しいのが現状す。
仕事を続けながら農業について学びたいと考えている方には、社会人向けの研修を行っている学校が全国各地にあるのでそちらも検討してみて下さい。
社会人におすすめの農業大学校は?
社会人の方には仕事との両立が可能な「アグリイノベーション大学校」がおすすめです。用意されているコースは、
- アグリビジネス(就農や農業ビジネスを始めたい方に)
- アグリスタンダード(農業に興味があるという方に)
- アグリチャレンジ(農業技術のみ学びたい方に)
- オンライン(通学が難しい方に)
の4つで、1年間の総受講時間が96~132時間となっています。
関東地方には千葉県、埼玉県、神奈川県、関西地方には京都府と大阪府に農場が設立されているので通いやすい農場を見つけることが可能です。
農業大学校の偏差値は?
農業大学校の偏差値が気になる方も多いでしょう。
ですが農業大学校は農業の専門学校なので4年制の大学とは異なり、偏差値という概念はありません。
基本的に書類選考と面接で合否を判定するため、学力はそこまで関係がありません。
前述した通り対象者は「高校卒業程度の学力を有する者」となっています。また、学校によっては必ずしも高校卒業資格が無くても中学校の卒業資格があれば受講が可能です。
入学までの流れ
農業大学校へ入学するには入学試験を受ける必要があります。募集日程については学校によっても異なりますが「推薦型選考」、「一般選考(前期)」、「一般選考(後期)」の3つに分けられいることがほとんどです。
中には3回目の一般選考を行う学校もあるので検討している学校のホームページを確認するようにしましょう。
推薦型選考の出願締め切りは10月中旬から末頃、一般選考(前期)が11月中旬から末頃、一般選考(後期)が1月末から2月頃が目安となっています。試験についても学校によって違いはありますが、出願締め切りの1~3週間後に行われています。
試験内容は、推薦型選考は作文と面接、一般入試では国語、数学、作文などの筆記試験の他に面接を行います。ほとんどの学校で前年の入試問題が公開されているので行きたい学校が決まっているのであればチェックしてみましょう。
農業大学校の倍率は高いの?
農業大学校の倍率は学校の募集定員数や受験する人の数によっても違いがありますが、
倍率はそれほど高くはありません。
一例として、長野県農業大学校で公開されている「令和4年度入学試験実施状況」を参考に、受験者数と合格者数を見ていきましょう。
「総合農学科 農業経営」では、募集人員が40名のところ受験者数が47名、合格者数が38名。
倍率は1.23となります。
一般の企業への就職や大学への進学と比べると、それほど高くはない倍率になっています。
農業大学校で取得可能な資格・免許
実は、農業大学校では農業をする上で必要になる資格・免許を在学中に取得することができます。
・農業技術検定
・フォークリフト運転技能講習
・車両系建設機械(整地・運搬・積込及び掘削用)
・玉掛け技能講習
・ガス溶接技能講習
・毒物劇物取扱者(農業用)
・危険物取扱者(乙種第4類)
・家畜人工授精師
・削蹄師
・家畜商
農業大学校卒業までに学費はいくら?
やっぱり学費は気になるところですよね。
農業大学校では、受験料2,200円、入学料5,650円、授業料118,000万円(年額)と、この3つの費用に関しては多くの学校で同じ金額となっています。
また、その他にかかる諸経費として、30~80万円程度(年額)が必要です。
諸経費には、教材費、資格試験受験料、研修費、入寮する場合の食費・光熱費など学校生活を送る上でかかる様々な費用が含まれています。
学校やコース、寮に入るかなどによっても変動しますが、年間で総額50万円~100万円程度のお金が必要になると考えておくといいでしょう。
学費の免除制度も
続いて、農業大学校への入学を考えている人に耳寄りな情報です♩
実は「高等教育就学支援新制度」というものがあり、農業大学校の学費が免除されることもあります。
これは、国で実施されている就学支援制度で、公立の農業大学校であれば支援と対象となります。
・進学先で学ぶ意欲がある
以上2つの要件を満たすことが条件とはなりますが、申請をすることで授業料や入学金の免除が受けられる可能性があります。
どのくらい援助を受けられるかは世帯収入、学校の種類などによって異なります。この他にも国が行う「農業次世代人材投資事業(準備型)」や、日本政策金融公庫が行う「国の教育ローン」など様々な農業大学校にかかる費用についての支援策はいくつかあるので該当しそうな方は調べてみて下さい。
まとめ:自分に合った学び方ができるのが農業大学校
いかがだったでしょうか?
この記事では、農業大学校の基礎知識をはじめ、入学までの流れや学費について網羅的に解説してきました。
しっかり学びたい方は2年制、就農に興味がある社会人の方は1日研修など学び方も学校やコースによって様々あるので自分に合った学び方で受講できるということがおわかりいただけたかと思います。
就農を考えている方はもちろん、既に就農しているけどスキルアップを目指したい方なども是非参考にしてみて下さい。