広い牧草地でのどかに草を食む牛たち。
そんな風景に憧れる方も多いのではないでしょうか?
「オリジナルのチーズやアイスを作ってみたい♩」と乳製品の製造に憧れて酪農家を志す人も増えています。
でも実際、酪農家ってどんな生活をしているんだろう?
やっぱり朝早いのかな?
肉体労働がしんどいという話も聞くし…
このような酪農に興味がある方に向けて、
公務員から酪農家に転身し、牧場経営をする著者が「酪農家になるための方法」を紹介します。
・酪農家とは?仕事内容について
・酪農家になるための具体的なロードマップ
・酪農家になるのに大変だったこと/そうでなかったこと
酪農家とは?仕事内容を見てみよう
まずは酪農家の毎日の仕事内容を紹介します♩
動物相手の仕事になりますので、以下の作業を基本的には毎日行います。
酪農家の1日のスケジュール例
5:00 えさやり、掃除
6:00 朝の搾乳
7:00 子牛の世話
16:00 えさやり、掃除
17:00 子牛の世話
18:00 夕方の搾乳
酪農家の仕事①:搾乳
酪農のお仕事と言えば一番に思い浮かぶのがこの搾乳ではないでしょうか?
多くの牧場では朝と夕に1日に2回お乳を絞ります。
なぜ2回かというと、絞ってあげないとおっぱいがミルクでパツパツに張ってしまい、牛が痛い思いをするからです。下手したら乳房炎という病気になってしまうこともあります。
なので2回と言っても、朝6時と朝10時のように近い時間帯ではなく、
朝6時と夕方18時のようにできるだけ12時間ずつ空けて絞るのが望ましいとされています。
このことが「酪農家は朝早くから仕事をしている」というイメージにつながるのかもしれませんね。
夜にゆっくり家族と時間を過ごそうとすると、どうしても朝早くに仕事を始めないといけないんですよね。
一方、例えば朝10時と夜22時に搾乳するという夜型の酪農家も時々います。
2回の搾乳時間の間をしっかり空けさえすれば、それぞれのライフスタイルに合わせて酪農家が作業時間を決めることができますよ。
酪農家の仕事②:エサやり
牛は1日に約15kgの乾草(青草だと60kg程度)を食べます。
また、食欲がない牛は体調が悪いことが多いので、エサをやると同時に健康チェックも行います。
酪農家の仕事③:牛舎の掃除
不衛生な環境ですと病気になってしまいますので、牛舎をキレイに掃除します。
掃除した糞尿を堆肥場で処理したり、その堆肥を畑にまく作業も行います。
酪農家の仕事④:子牛の世話
子牛にミルクをあげます。
子牛は親牛に比べると身体が弱く、特に冬は体調を崩しがちです。
こまめに体調チェックをするとともに、ジャケットを着させたり夜にはヒーターをつけたりと寒さ対策を万全に行う必要があります。
酪農家はルーティン以外にどんな仕事をしている?
さて、酪農家の1日の仕事内容を見てきましたが、ここまではルーティンワーク。
不定期で以下のような仕事があります。
酪農家の仕事⑤:人工授精(種付け)
牛も人間と同じで子どもを産まなければお乳は出ません。
また、出産して時間が経つほどお乳の量も少なくなってしまうため、1年に1回出産をしています。
発情している牛を発見次第、妊娠のために人工授精を行います。
酪農家の仕事⑥:出産対応
年に1回出産をするので、もし30頭飼っていたら年間30回、月に2~3回出産があることになります。
安産だと人間が何もせずに産まれ、朝牛舎に行ったらすでに産まれていたということもよくあります。
その一方で難産もあり、場合によっては獣医さんを呼んで帝王切開になってしまうこともあるのです。
牛は種付けから約280日で出産予定日を迎えます。
お産は朝晩関係なく始まるので、出産予定日が近づくと酪農家はそわそわしながら牛の様子を何度も確認しています。
酪農家の仕事⑦:牧草収穫
酪農家は牛さえ育てればOKかというと、牛のエサである牧草の収穫も必要です。
主に春~夏にかけて牧草を育て収穫します。
なお、エサを自分で作らず全て購入する酪農家も多くおり、コストは高くなりますが時間的な余裕をうむことができます。
変わりつつある酪農の労働〜スマート畜産の話も〜
これまで見てきたように酪農家の仕事はなかなかハードです。365日牛のお世話をしています。
もちろん酪農ヘルパーに仕事を代行してもらえば月に1回休むことはできますが、やはり他の仕事に比べると休みは少ないのが現状です。
しかし酪農の現場でも機械化がすすみ、ゆっくりではありますがその労働環境は改善されてきています。
近年では、搾乳ロボットという自動で搾乳を行うロボットの導入により、1日2回の搾乳作業から解放され、ゆとりある生活を送る酪農家も増えてきています。
また、子牛に自動でミルクをあげる哺乳ロボット、自動えさやり機、自動掃除機、発情やお産をスマホに知らせるセンサーなど、機械による自動化はますます進んでいます。
今後のスマート畜産には期待ですね!
酪農家になるにはどうしたらいいのか?【酪農家が解説】
続いては、実際にあなたが酪農家になる方法を解説していきます。
大きく分けて2つのことが必要になります。
ステップ1:情報収集。相談窓口に問い合わせよう
ステップ2:技術を習得
ステップ1:相談窓口に問い合わせてみよう
技術習得のためにどの方法が自分に向いているかわからないという方や、
まだまだ酪農の情報を知りたいという方は、新規就農のための窓口に問い合わせてみましょう。
全国新規就農相談センター
場所のめどがついていない方はこちらがおすすめ。
対面面談のほかに、Zoomによるオンライン面談も受け付けています。
▶︎参考:全国新規就農相談センター
各都道府県にある新規就農相談窓口
具体的な就農場所のめどがついている方は、各都道府県ごとに設置されている新規就農相談窓口がおすすめです。より現場に即したアドバイスを受けることが出来ます。
▶︎参考:新規就農相談窓口
ステップ2:酪農家になるための技術を習得しよう
続いて、酪農家になるには技術の習得が必要です。
技術習得には主に3つの方法があります。
方法1:農業大学校で勉強する
農業大学校は農業の専門学校として全国42道府県に設置されています。
高校生だけでなく社会人も入学でき、1~2年で農業技術や経営を学びます。
▶︎参考:農林水産省「農業大学校等のご案内」
方法2:酪農ヘルパーとして経験を積む
酪農ヘルパーとは酪農家がお休みが欲しい時に、代行で仕事をする職業の方です。
毎回色んな酪農家を回って仕事をするため、規模・牛舎・設備・エサの内容などその酪農家ごとのスタイルを学ぶことができます。
全国に約270ほどのヘルパー組織があり、職員を募集しています。
▶︎参考:酪農ヘルパー全国協会
方法3:牧場に就職する
3つ目は、牧場の従業員として勤務することで技術を習得する方法です。
私はこの方法で技術を習得しました。
従業員の募集情報は「酪農 求人」などと検索したり、転職サイトや農業専門の就職サイトを見ると結構載っていますよ。
ただし牧場によって募集する人材は異なるという点には注意が必要です。
「新規就農を応援。2~3年で独立できるよう技術を伝える」という牧場もあれば、「ずっと働き続ける方を募集。いつか辞める人は求めていない」というところもあります。
募集情報をしっかりと確認をして、納得できる就職先を見つけましょう。
【体験談を語る】酪農家になるのに大変だったこと・そうでなかったこと
最後に、著者が酪農家になる際に
・実際大変だったこと
・思っていたより大変でなかったこと
を体験談としてお伝えします。
参考になれば幸いです。
酪農家になるのに思ったよりは大変ではなかったこと
これは意外にも思われる方が多いかもしれませんが、資金調達は思ったより大変ではありませんでした。
酪農を含む畜産業全般は、農業の中でも特に初期投資がかかりますが、
私の場合、貯金はほぼゼロで開業しました。
今は新規就農の補助金が大変充実しているので、それらを上手に活用することで自己資金を貯めなくても開業することができます。
酪農家になるのに大変だったこと
お金は貯めなくても農業は始められたのですが、補助金申請のための書類作成が大変でした。
私の場合、役所とのやりとりで8ヶ月かかりました。
書類作成に関してはあらかじめ覚悟を持って臨むのがいいでしょう。
さあ牛飼いの道へ
いかがだったでしょうか?
仕事内容を見てきたように、酪農家は大変な仕事です。
ですが、生き物とともに暮らす楽しさや仕事のやりがいは何よりも格別です。
そして、しっかり儲けて機械を導入すれば労働環境をよくすることができます。スマート農業の今後にも期待ですね。
興味を持った方、まずは相談窓口に問い合わせてみましょう。