家庭菜園でのお悩み第1位は「虫がつく」。
農薬を使うのはなんか難しそう…
知らないからこそちょっぴり怖いな。
このようにお悩みの方に向けて、今回は農家の私が、
「農薬とは」「農薬の選び方」「具体的な農薬の使い方」を基本から解説していきます。
基本をマスターすればどんな農薬も使いこなせるようになり、もう虫食いで悩むことがなくなりますよ♩
農薬とは
農薬とは、病気や害虫、雑草から野菜を守るための薬品です。
農薬と聞くと、身体に害のある危険なものをイメージされる方もいるかもしれませんが、しっかりと国の基準を満たしたものです。間違った使い方さえしなければ、問題ありません。
ちなみに、農薬取締法では以下のように定義されています。
「農薬」とは、「農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみ、草その他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤、除草剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」
(引用:農林水産省 農薬に関するページ)
農薬の選び方:どんな農薬があるかチェック!
農薬は、大きく分けると4つに分けられます。
②殺菌剤・・・病原菌やウイルスに対して使用
③殺虫殺菌剤・・・害虫と病気それぞれに使用
④除草剤・・・雑草に対して使用
何に対して使用するのかで、使用する農薬がかわってきます。
まずはあなたの目的をはっきりさせて、その後に該当する農薬を選びましょう♩
ここからは、4種類の農薬をさらに細かく見ていきます。
それぞれの農薬の中でも、作用性(どんな風に効果が出るか)によってさらに種類が分別されています。
①殺虫剤
殺虫剤は以下の4つに分かれています。
- 浸透移行性剤・・・農薬の成分が根や茎から吸収され、植物全体が殺虫効果を持って防除します。
- 接触剤・・・害虫に直接散布したり、散布した葉茎と接触させることで防除します。
- 誘因殺虫剤・・・殺虫剤を練り込んだ餌をまくことで害虫を誘引し、食べさせることで防除します。
- 物理的防除剤・・・害虫の呼吸する穴(気門)を物理的な膜で覆うことで、窒息させて防除します。
②殺菌剤
殺菌剤は以下の2つに分かれています。
- 保護殺菌剤・・・植物の傷や気孔から病原菌が侵入するのを防ぎます。予防的に散布します。外から守るイメージです。
- 浸透性殺菌剤・・・植物の中に吸収され、侵入した病原菌に作用します。散布した際に、植物の表面にある病原菌を殺菌する効果もあります。中から守るイメージです。
③殺虫殺菌剤
②や④に該当するので割愛。
④除草剤
除草剤は以下の3つに分けられます。
- 接触型・・・薬剤がかかった部分だけ枯らします。即効性が高いです。
- 移行型・・・植物全体に浸透し、根まで枯らします。効果が出るまで少し時間がかかります。
- 土壌処理剤・・・土壌の表面に雑草を枯らす成分の層を作り、これから生えてくる雑草や、発芽したての雑草を枯らします。
家庭菜園での農薬の正しい使い方
ここからは、家庭菜園でも幅広い作物に使用される、ベニカ水溶剤を例に、農薬の使い方をご紹介します。
タイプによって農薬の使い方は違いますが、基本的に守るべきことは一緒です。
基本をおさえておけばどんな農薬でも使いこなせますよ♩
手順①:農薬のラベルの確認
農薬のラベルにはさまざまな情報が書かれています。
使用できる植物や効果のある害虫の種類、使用回数など多岐に渡ります。
写真のラベルを参考に、詳しく見てみましょう(番号は写真と対応しています)。
①作物名 | 使用できる作物 |
②適用害虫名 | 効果のある害虫 |
③希釈倍数 | 薬剤(原液)を何倍に薄めて使用するか |
④使用時期 | 収穫する何日前まで使用できるか |
⑤総使用回数 | 栽培期間中に何回使用できるか |
⑥使用方法 | 薬剤をどのように使用するか |
必ずラベルを確認するようにしてください。
手順②:薬剤を薄める
まずは使用したい量に合わせて水を用意します。
上の画像のように、ホームセンターで購入できる市販のビーカーを用いると便利です。
ビーカーに水が用意できたら、規定量の薬剤を入れます。
容器の蓋が軽量カップになっており、目盛りがある場合もありますが、ご自身で使用したい量に対応していない場合もあります。その場合は園芸用のピペットを使用しましょう。
農薬の濃度が均一になるように、十分にかき混ぜてください。
以下の表は、希釈倍率と水量、薬剤の量の一例です。
希釈倍率 | 薬液の量 | ||
水500ml | 水1L | 水3L | |
200倍 | 2.5ml | 5l | 15ml |
500倍 | 1.0ml | 2.0ml | 6.0ml |
1000倍 | 0.5ml | 1ml | 3ml |
3000倍 | 0.17ml | 0.33ml | 1ml |
希釈倍率は必ず守るようにしてください。
農薬は「濃くすれば効果がよく出る、薄ければ安全」という訳では決してありません。
希釈出来たらスプレーボトルや噴霧器にいれます。家庭菜園ではそこまで多くの農薬を使うことは少ないので、購入できる蓄圧式の噴霧器をおすすめします。
農薬の効果を引き出すために、展着剤の使用も効果的です。展着剤を使用することで、農薬が野菜に付着しやすく、流れ落ちにくくなります。農薬の効果を十分に引き出し、結果的に農薬の使用を減らせます。
手順③:農薬を散布する
いよいよ散布していきます。
農薬を散布する場合、周囲への配慮するとともに、自身へかからないようにしましょう。
風の強い日は周辺に飛びやすくなるので、なるべく風のない日に散布するのがGood。
また、長袖長ズボン、帽子、マスク、手袋など着用し、肌の露出を最小限にしてください。
散布は後ろ向きに進みながらかけていきます。前に進みながらの場合、自分自身にかかりやすくなります。
葉の裏や茎などにもまんべんなくかかるように、スプレーやノズルを動かしながらかけていきましょう。
余った農薬は保存することができません。余ってしまった場合は、散布ムラのある場所に改めて散布するなど、極力使い切るようにしましょう。
それでも余る場合は、作物の植わってない場所に穴を掘って流します。決して河川や排水路に流さないでください。
1. なるべく風のない日に散布
2. 肌の露出を最小限に
3. 後ろ向きに進みながら丁寧に散布
他にも色々!農薬のタイプ別使い方
先ほど紹介した、よく使われる農薬「ベニカ水溶剤」は水で薄めて使うタイプの農薬です。
この他にも「粒状で土と混ぜ合わせるタイプ」や「ジェット噴射させるスプレータイプ」のものなど様々な商品があります。
それぞれタイプ別の使い方を簡単にご紹介します。
タイプ①:乳剤・水和剤
先に具体例で使い方を解説したのはこちらのタイプ。
液体や粉末を水で薄めて噴霧器で散布するタイプです。散布量に合わせて大量に作ることも可能です。
ビーカーなどに規定量の水と薬剤を入れて混ぜ合わせたら、噴霧器やスプレーに移します。野菜全体に満遍なくかかるように散布していきます。
風で舞いやすいので風が強い日には散布しないようにしましょう。また、残った農薬は保存できないので、使用する分だけ作り、万が一残った場合も川や排水路に流さないようにしてください。
タイプ②:粒剤
予め希釈されており、そのまま野菜に向けてスプレーするだけでOKの便利なタイプ。
量が限られているので、スポット的に使用する場合におすすめです。
使い方は、野菜に向けてそのままスプレーするだけ。
商品によってはジェットスプレーになるものもあるので、葉茎が茂った奥の方に届かせやすいです。
タイプ④:ペレット剤
ペレット状になっていて、粒状よりやや大きいです。ネキリムシやダンゴムシなどが好む餌と薬品が混ざっています。普段は隠れている害虫類を臭いでおびき寄せ、食べさせることで害虫を駆除できます。
株元や畝の全体にバラまくように施しますが、薬剤が濡れてしまうと臭いが薄れて効果も減るので、乾燥しているときにまいてください。夜行性の害虫類を駆除したい場合は、夕方にまくと効果を発揮しやすいです。
タイプ⑤:除草剤(液体)
大半のものは水で希釈しますが、そのまま散布できるタイプのものもあります。
希釈するタイプの場合は、専用のジョウロや噴霧器に薬剤と水を入れて希釈します。枯らしたい雑草が生えている場所に、ムラができないように散布してください。接触型の除草剤は、かかった部分しか枯れないので特にムラができないようにしましょう。
野菜にかかってしまうと枯れてしまうのはもちろん、収穫した場合健康被害が出る可能性もあるので、野菜周辺には散布しないようにしてください。
タイプ⑥:除草剤(粒剤)
粒剤タイプは、数ミリ程度の粒になっています。
雑草を枯らしたい部分に、既定の量をパラパラと撒いていきます。
この時に背丈の高い草があると邪魔をして均一にまきにくくなるので注意してください。薬剤の成分は、水分と反応するため、土が湿っている状態の時に散布すると効果的です。