「オリーブ」は、イタリアやフランスなどの地中海沿岸諸国の料理に使われ、最近では健康食品として人気になっています。
「オリーブ」に多く含まれるオレイン酸は、生活習慣病や美肌作りに効果があり、動脈硬化など予防、ウィルスからの抗菌作用もあるポリフェノールなども含み、現代の食生活には欠かせない食品です。
そうした風潮もあって、「オリーブ」を鉢植え栽培する家庭も増えてきている昨今ですが、あまり実がなっているところを見たことがありません。
実をならすにはちょっとしたコツが必要です。
今回は家庭菜園のプロが、パイナップルのご家庭で簡単にできる育て方・栽培方法のコツを解説します!
明治時代から本格化した日本のオリーブ栽培
「オリーブ」は西アジア地域が原産で、地中海沿岸地方をはじめ、中東や南北アメリカなど多くの国で栽培されています。
世界での年間生産量は約2,360万トン(2020年)ですが、日本ではわずか450トン(2018年)に過ぎません。栽培地域も限られ、小豆島(香川県)が90%以上を占めます。
「オリーブ」が日本に入ってきたのは、オリーブオイルとしては約400年前の安土桃山時代に、来日したキリスト教の伝道師が携えてきたといわれています。
その後、鎖国政策などにより日本人がオリーブと接する機会はなく、ようやく江戸時代の末期になって、医師の林洞海(はやしどうかい)がフランスからオリーブ苗木を輸入し、日本で初めて横須賀などに植えましたが、うまく育ちませんでした。
それでも1908年(明治41年)に政府が輸入した苗木を三重県、香川県、鹿児島県で試植し、そのうちの、地中海地方の気候に似ている香川県だけが育ったという歴史があります。
関東以南の平地なら栽培可能!鉢植え栽培がおすすめ
「オリーブは香川県以外では育たない」というイメージがありますが、耐寒温度はマイナス10℃と寒さにかなり強く、地中海気候でしか育たないということはありません。
いくぶん雨にデリケートで、2品種以上植えないと実がつかないという難しさはありますが、関東地方以南の平地では栽培可能です。
特に、家庭菜園では、梅雨の時に軒下などに移動できる鉢植え栽培がおすすめです。
オリーブの苗の準備:2品種セット or ダブルプランツがおすすめ
オリーブの品種は世界で1600種以上あるといわれています。
香川県では背が高くなる(直立性)で、果実加工とオイル兼用の“ミッション”が主に栽培されていますが、家庭用としては、枝が横に広がる(開帳性)で果実加工用の品種“マンザニロ”が流通量も多く適しています。
ただし、自分の花粉では結実しない自家不和合成(じかふわごうせい)が強く、開花時期の合う他品種を相棒として植える必要があります。
あらかじめ2品種セットになっている苗を選ぶと良いでしょう。
そして、最も家庭菜園向けなのが、2種類のオリーブが1本の木に接ぎ木(多種接ぎ/ダブルプランツ)されている苗木です。
通販サイトで運が良ければ「ダブルプランツ(多種接ぎ)」が見つかりますよ。
次に、あらかじめ2品種セットになっている苗がおすすめ。
オリーブの土・植え付け:家庭菜園では3月の植え付けがおすすめ
オリーブは中性付近の土を好みます。
庭植えの場合、庭土に腐葉土を入れ、さらに苦土石灰を少し混ぜて、酸性にならないように調整してください。また、排水力に劣る粘土質や地下水位の高いところ(水田跡など)は避けましょう。
鉢植えの場合は、市販のオリーブの土があればいちばんいいですが、なければ果樹の土または野菜の土に少し苦土石灰を混ぜ込んであげるとGood。
植え付け時期は、3月 or 9月〜11月。
新しい枝(新梢/しんしょう)が出始める3月頃が管理しやすくベストな時期です。
オリーブの木の仕立て:上へは伸ばさずに横へ広げる
「オリーブ」は、まっすぐ伸びる直立性のものと、横に広がる開帳性の品種があります。
直立性の場合、そのまま伸ばすと3m位の高さになります。品種によっては10mにもなり、とても管理ができません。そのため2~4本の枝を残し、主枝を切り詰めます(開心自然形仕立て)。
そのまま上へ伸びないように管理し、上へ伸びる枝は思い切って、横に伸びるものは、伸びすぎたものや混み合っているところを少し切り詰めます。“直立性”の代表的品種はミッションです。
一方、“マンザニロ”のような開帳性のものは木が2,5mくらいになったら主枝を50cmほど切り詰め芯を止めます(変則主幹形仕立て)。
枝は上へ伸びるものを思い切って、横に広がるものや、混み合ったところは切り詰めます。
オリーブの開花・受粉:人工授粉がおすすめ
オリーブの開花は5月下旬〜6月中旬頃で、花は房状となって10から30個の花が咲きます。
虫や風などでの受粉が期待できるのですが、開花の時期と梅雨が重なるため人工授粉がおすすめ!
自分の花粉では結実しないので、梅雨の晴れ間に、他品種の花粉を筆などでカップに集め、もう一方の花にこすりつけます。
鉢植えの場合、雨に当たらないように軒下などへ移動すると、いつでも人工授粉ができますよ♩
オリーブの収穫:黄緑色から紫色に変化するオリーブの実
オリーブ栽培でいちばんやっかいなのが、果実の自然落下です。
花は大量にあるのですが、人工授粉をしても多くが落花してしまいます。運良く着果したものも自然落果が多く、実が収穫できるのは総花数の約3%といわれています。
オリーブの実は受粉後約40日でいったん成長が止まります。
その後種を作りまた大きくなり10月~11月頃に成熟します。
熟す過程で実の色が黄緑色→紫色と変化していきます。
はじめの黄緑色した頃(グリーンオリーブス)は含油分が少なく主に果実加工用(テーブルオリーブス)に使われ、熟した紫色の果実(ライブオリーブス)は、オリーブオイルに使用されています。
オリーブの加工:果実は塩で渋抜き
「オリーブ」の実は、生では渋くて食べられません。
そしてこの渋み(オリュロペイン)は柿の渋とは違って、アルコールや二酸化炭素では抜くことができません。
渋を抜く方法ですが、果実1kgに対し150g程度の食塩を用意し、密閉できる容器に果実と塩を入れます。
そのとき、実は塩の中にしっかり隠れるようにするのがポイントで、1~2か月で渋さが抜けてきます。かなり塩辛く、渋みも残っているので水で洗って塩抜きをしてください。
オリーブオイルは洗った実をそのままよく揉んで、絞ってそして濾すとできあがります。量は少ないですが、正真正銘の最高級のバージンオリーブオイルの完成です♩
オリーブの肥料:元肥7・追肥2・礼肥1の割合で
肥料は3月(元肥)、6月(追肥)、11月(礼肥)に分けて7:2:1の割合で、元肥をひと握り、追肥・礼肥は元肥から計算した割合で、株元から少し離れたところにばらまきます。
おすすめは以下の肥料です。
オリーブの剪定:背を低くして横に広げる
オリーブは成長力が強いので、すぐに茂ってきます。混み合ってきたら間引いて風通しをよくしてください。本格的な剪定は2〜3月の木が休眠しているときに行います。
方法としては上へ伸びる主枝を手の届く範囲に再度切り詰め、上へ伸びる枝や混み合っているところを調整します。「オリーブ」は同じ場所から左右対称に2本の枝が伸びてくるので(対生/たいせい)、片方を枝元から切り落とします。
「オリーブ」の花芽は、枝の中程に多くつくので、先端を切り詰めても花芽がなくなることはありません。しかし、枝元付近にはあまりつかないので、切りすぎないよう気をつけてください。
オリーブの病害虫:オリーブアナアキゾウムシに注意
病気は、実に褐色の斑点ができる炭疽病(たんそびょう)が多く発生します。病気になった実を発見次第取り除いてください。
害虫はオリーブアナアキゾウムシがやっかいです。幼虫が樹皮の下に入り込み食い荒らします。枯れることがあるので要注意です。根元に木くずやフンを見つけたら、樹皮の中にいる幼虫を針金などで殺してください。
プロのワンポイントアドバイス
オリーブは他品種を2本以上植えないと実がなりません。
落花や落果が非常に多いのでなりすぎることはまずありませんが、満足できる果実を収穫するためには人工授粉をすると確実ですよ♩
それではまた!