家庭菜園のプロが教える梅の育て方

梅の育て方・栽培方法のコツ|家庭菜園のプロが教える

梅の栽培カレンダー

寒い冬からようやく日差しの温もりを感じる春一番に咲き始める果樹「梅」。

住宅街を歩いていると綺麗な梅の花を見かけ、「ようやく春になるんだな」とホッとしますよね。

綺麗な花が散った後には梅の実がつきます。とても酸っぱいですが、ちょっと手間をかけてあげればおいしい食品や飲料になります。豊富に含まれるクエン酸は女性に嬉しい成分です♩

さて、そんな梅ですが、実は家庭菜園初心者にもおすすめの果樹なんです。

今回は、家庭菜園のプロが梅の育て方をわかりやすく解説していきます。

おすすめは苗からの栽培

梅の実の収穫:収穫は5月中旬から6月

梅は、ホームセンターやネットでを購入することをおすすめします。販売されている苗はほとんどが接ぎ木している苗で、病気等に強く、実つきも1年目の苗で4~5年、2年目の苗で3~4年といわれています。花が咲いてくれれば2年目から少ないですが収穫できます。

ちなみに苗からではなくから育てる方法もあります。種から発芽した苗を“実生苗(みしょうなえ)”といいますが、実がなるのに『桃栗三年柿八年 梅は酸(す)い酸い十三年』とことわざにあるように、10年以上かかります。

それでも実からという場合は、完熟した種を割って出てきた“仁”を植えます。挿し木でも根づくのですが、元になる挿し穂をどこかから手に入れなくてはいけませんし、すべての挿し穂が成功するとは限らないのでおすすめはしません。

梅の品種:梅の多くは違う品種の花粉で結実

実梅は品種が多く、苗を購入するとき、気をつけなくてはいけないことがあります。

それは、”基本的に違う品種を2本以上植える“ということ。

竜峡小梅(りゅうきょうこうめ)」などの小梅種は1本で実がなる(自家和合性)のですが、基本的には大実のものは1本だけでは実がならない(自家不和合性)のです。

例えば「鶯宿(おうしゅく)」や「南高(なんこう)」「白加賀(しろかが)」など有名な従来品種は1本だけでは実がなりません

 

一方、従来種で八重の花が咲く「花香実(はなかみ)」や「梅郷(ばいきょう)」、「金紅梅(きんこうばい)」などは、1本でも実がなります。人気の品種は花も美しい「花香実」です。

受粉樹としては小梅品種が適していますが、購入する前に必ず販売苗のラベルや店のスタッフに問い合わせて確かめましょう。

 

梅の品種:竜峡小梅

竜峡小梅(1本で実がなるけど小さい)

梅の品種:鶯宿

鶯宿(大実。違う品種が必要になる)

梅の品種:南高梅

南高梅

よく授粉できなかった梅。品種不明

よく受粉できなかった梅。品種不明

 

梅は住宅街に比較的多く植えられており、自家不和合性の品種でも花粉が飛んできて見事に結実することがたまにあります。まずは1本植えてみて、2~3年経っても実がならない場合は、その時点で花が咲くような少し大きな苗を購入するのもいいかもしれませんね。

植え付け・仕立:将来を考えて小さくまとまるように仕立てる

梅の植え付け時期は11月から2月です。

地植えする場合は直径80cmくらい、深さ60cmくらい掘り返して腐葉土を30~50リットルほど入れた土(庭の土でOK)に植え付けます。その際苗の高さを根元から60cmくらいに切り詰めます。これは翌年充実した枝を発生させるための処置なので、必ず実行しましょう。

 

そして梅は放っておくと3m以上に成長し、枝も茂ってきます。

2年目あたりからは将来の樹形を考えて枝を切りそろえます。これを仕立てといい、出てきた枝のうち元気な3本を残し、ほかはすべて切り捨てます(開心自然形仕立/かいしんしぜんけいしたて)。

 

4年目からは残した3本の主枝(しゅし)から枝を発生させて、実がなる部分を増やします。ただし、先端部分は1本だけ残しあとは切り捨てます。

肥料:肥料は年3回

肥料は11月に元肥(もとごえ)として、果樹用の有機配合肥料か、速効性化成肥料を株元から50cmほど離れたところに堆肥などとともにすき込みます。

追肥(ついひ)は花が終わったあと、4月頃に、また礼肥(れいひ)として収穫後の6~7月に有機配合肥料か遅効性化成肥料を株から少し離れたところにばらまきます。

受粉・摘果:自然に任せてOK!

梅の受粉:よく受粉した果実

よく受粉した果実


梅はほとんどの場合、虫や風によって受粉しますので、人工授粉はしなくてOKです

また、摘果(てきか)も必要ありません

というのも、そもそも摘果は実を大きくするためと、翌年に実つきが悪くなる(隔年結果/かくねんけっか)のを防ぐために行います。

ところが、梅の場合摘果しても実はあまり大きくならないですし、摘果しなくても翌年ちゃんと実がついてくれるというわけです。

梅は人工授粉・摘果が不要なので、初心者におすすめの果樹なんです♩

摘芯・間引き・剪定:桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿

梅栽培では、摘芯(てきしん)・間引き(まびき)・剪定(せんてい)が必須の作業になります。

ここが梅栽培のキモです。

それぞれわかりやすく解説していきます。

摘芯

摘芯とは新芽のときに行う作業です。伸びてきた新梢(しんしょう/伸びてきた新芽)を、葉を10枚程度残したところでその先を切り取ります。

梅は短い枝に実がなる(短果枝/たんかし)のでこの作業は必須です。

間引き

間引きは、新梢が重なったりして混み合ったところを日当たりや風通しをよくするために行います。

摘芯・間引きは、収穫時期と重なりますが4月から6月頃に行います。

剪定

剪定(せんてい)とは枝を切って樹形を整える作業で、11月から1月の冬季に行います。

梅は昔から「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」といわれるように、枝を切ってやらないとどんどん大木になってしまい、実がならなくなってしまいます。

剪定のポイント

短く剪定した短果枝に咲いた梅の花

短く剪定した短果枝に咲いた花。実になる可能性は大きい


ポイントは「花芽のついた枝を1/4カット、短く剪定」です。

 

一般的に、果樹には花芽(はなめ)と葉芽(はめ)があります。

花芽は成長すると花になり将来的に実がなるところです。当然、花芽を切ってしまうと実はつきません。

花芽の見分け方は意外に簡単で、梅の花芽はふっくら、葉芽は細いです。

 

また、残念ながら長く伸ばした枝にはいくら花がついても実がならないので、先端から1/4程度のところを切り詰めておきます

 

さらに、真上に伸びる枝(徒長枝/とちょうし)は、花もあまり咲かず、木を大きくするだけなのですべて枝のつけ根から切り落とします。また、枯れてきた枝も整理しましょう。

摘芯を待つ新梢で混み合ってしまった梅の木

摘芯を待つ新梢で混み合ってしまった梅。真上に伸びた徒長枝は剪定時にすべて切り詰める

収穫:収穫は5月中旬から6月

梅の実の収穫:収穫は5月中旬から6月

青梅の場合、緑色の実が丸くパンパンになった5月中旬頃から収穫が始まります。

少し熟すと実の色が黄色がかってきます。青梅と熟しはじめの実は、枝から直接もぎとります

 

さらに熟すと黄色みが強くなり、「南高」などは赤くなってきます。

こちらの場合は、落下する実を受ける傘のようなものを吊り下げたり、和歌山県の産地では下にブルーのネットを敷いて、木を棒でたたいて実を落下させます。

完熟した南高梅の収穫風景

完熟した南高梅は、ブルーのネットに落下させて収穫。
和歌山県みなべ町の梅農園にて。

梅干しや梅酒造りにチャレンジ

日なたで干している梅干し

日なたで干している梅干し。
3日くらい干すとできあがり。
赤いのは赤しそにつけたもの。

 

梅の加工品、例えば梅酒や梅ジュース、梅ジャムは簡単に作ることができます。ひと昔前はご家庭で結構作られていました。

健康に良い食品ですから、あなたも梅の木を育てて、梅干しや梅酒造りにチャレンジしてくださいね。

家庭菜園プロのワンポイントアドバイス

梅は毎年きっちりと摘芯剪定さえしておけば、あとは何もしなくても春に花が咲き、実がなってくれるとても扱いやすい果樹です。

実を使った食品作りを楽しんでくださいね。

 

今回は初心者の方でも失敗しないように、育て方をかなり細かく解説しました。

もちろん全部を理解する必要はありません。自由に始められるのも家庭菜園の楽しいところですよね。

あなたが実際に育てていて何かわからないことがあった時、この記事に立ち戻ってくるときっと役立つと思います。

それではまた!