家庭菜園でも大人気の「みかん」。
今回は、みかんを家庭菜園で育てる方法を家庭菜園のプロが解説していきます。
植え付け方法や肥料の時期、剪定のポイントなどを画像多めでわかりやすく解説していきます。
初心者が失敗しがちな栽培のポイントも抑えることで、あなたも甘〜い温州みかんを収穫できますよ♩
みかんの品種
日本には柑橘類だけで500種類もあります。
一般的に“みかん”といっている”温州みかん(うんしゅうみかん)”に加え、ポンカン、伊予柑(いよかん)、金柑(きんかん)、不知火(しらぬい/デコポン)、夏みかん、甘夏、桶柑(たんかん)、文旦(ぶんたん/朱欒=さぼん)、柚子(ゆず)、レモン、酸橘(すだち)など多くの種類があります。
そして、果樹の家庭菜園で今人気なのが、今回ご紹介する”温州みかん“です。
温州みかんの品種
極早生 | 日南1号、ゆら早生、上野早生 | 9月中旬頃に収穫 |
早生 | 宮川早生、興津早生、田口早生、小原紅早生 | 10月下旬〜11月に収穫 |
中生 | 南柑20号、愛媛中生、大津4号 | 11月下旬〜12月初旬に収穫 |
晩生 | 青島温州 | 12月〜収穫 |
温州みかんには、大きく分けて“極早生(ごくわせ)”、“早生(わせ)”、“中生(なかて)”、“晩生(おくて)”があります。
“極早生”は、甘みの乗りが早く9月中旬頃には収穫できる品種
“早生”は10月下旬から11月いっぱい穫れる品種で、甘くて最も流通量の多い品種です。
“中生”は11月下旬から12月初旬収穫の品種で、甘くておいしいみかんです。
“晩生”は、“早生”の収穫が終わった頃から穫れ始めるみかんで「青島みかん」が代表的品種です。
皮が厚く、貯蔵性が良いため少し早めに収穫し、追熟することによって酸味がなくなり、とっても甘いみかんです♩
おすすめは早生・中生種
極早生から中生まで色々ありますが、収穫時期に差があるだけで栽培方法はほとんど変わりません。
極早生は早い時期に食べられあっさりとした甘味の品種が多く、実つきが良いのが特長です。
早生・中生は、甘味/酸味のバランスが良く味が濃いみかんです。実つきも良いので栽培におすすめします。
また、晩生の「青島温州」などは、収穫するタイミングや追熟するための低温貯蔵庫が必要など初心者には難しく非推奨です。
寒さに弱いので寒冷地では露地栽培不可
みかんは寒さには弱い果樹です。耐寒温度マイナス5℃といわれており、北関東以北や標高の高い地方では栽培が難しくなっています。
マイナス5℃以下が10日以上ある地域では、根元を枯れ葉や稲わら、マルチで覆ったり、幹全体に寒冷紗のようなものを被せれば栽培することができますが、冬の管理がちょっと大変かもしれません。
苗・用土:種がないので最初は苗を購入
みかんは、種からではなく苗を購入して栽培していきます。
種はブドウのように果実がなってから人工的に薬剤で種なし処理をするわけではなく、はじめから種ができません(雄性不稔/ゆうせいふねん)。そのため接ぎ木をした苗を購入することになります。
あまり土を選びませんので、地植えの場合は、庭の土に腐葉土をたっぷり混ぜて水はけを良くします。
プランターや鉢植えで栽培する場合は、市販の果樹の土を使うといいでしょう。
植え付け・仕立:1年目は切り詰めて植えつけ
1年目の苗は棒状に伸びていて(棒苗)、枝はまだついていません。
冬の寒さが緩む3月上旬から4月上旬に、日当たりの良い場所を選び植えつけます。
ここでの大切な作業が、棒苗を根元から30〜40cmのところで切り詰めることです。
これは低い位置からしっかりした枝を発生させ、実つきを良くするためです。
初心者ではなかなか思い切って、切れないかもしれませんが、必ず実施してください。
切り詰めた後は土に植え付け、すぐ側に支柱を立てておくと倒れることがなく安心です。
2年目には棒苗から数本の枝が出てきます。骨格となる枝(主枝)は3本です(開心自然形仕立/かいしんしぜんけいしたて)。ほかは根元から切り取ります。
主枝が上を向いている場合は、できるだけ横に広がるようにひもなどで誘引してください。すると将来樹高が低くなり、作業・管理がしやすくなります。
結実:1年苗は実がなるまで4~5年
1年目の苗を植えてからは結実まで4〜5年かかります。
「そんなに待てない」という方は、実のついた苗を購入してスタートするといいかもしれません。
ただし、実をつけるには苗が小さすぎますので、実をつけすぎたり、翌年まで実をつけ続けたりすると木が弱り、枯れてしまうことがあるので要注意です。
開花・受粉:自家受粉するので手間いらず
みかんの開花は5月頃です。
白い花弁が5枚、真ん中に大きな雌しべ、雌しべの周りに雄しべが密集しています。
自分の花粉で受粉しますし、5月は虫や蝶なども活発なので、人工授粉は必要ありません。
摘果:実のつけすぎはいいことなし
みかんは生理落果(せいりらっか)といって、受粉しても実が多すぎると自ら落下させます。それでも多すぎるときは人工的に摘果しましょう。
というのも、実は多くなりすぎるとサイズが大きくなりません。
さらに、それ以上にやっかいなのが、隔年結果(かくねんかっか)といって実がつきすぎた年の翌年は不作になることです。
さて、摘み取り方のポイントですが、みかんは1つの果実に葉が25枚(葉果比/ようかひ)必要なので、25枚の葉に1個の実を残し、ほかは摘み取ります。
そして、摘み取るのは、平均より小さい果実(小果/しょうか)、傷のある果実(傷果/しょうか)、上向きについた大きな果実(天なり果/てんなりか)を優先します。
夏枝・秋枝の除去:枝が混んだら手入れ
摘果から収穫までの間に、夏に伸びた枝(夏枝)と秋枝を除去します。(※春枝は残します!)
みかんは春、夏、秋と3回枝が出てきますが、実がつくのは春に伸びる枝(春枝)です。6〜8月頃発生する夏枝は長く伸びます(徒長枝)が実はつきません。
8月から9月の秋枝は逆に短くて貧弱です。秋枝が伸びてきた8月〜9月頃に夏枝と秋枝はできる限りつけ根から切り取りましょう。
見た目で株全体がスカスカになるようでしたらその年は夏枝、秋枝とも残しても構いません。
春枝は翌年実がつきますから必ず残しましょう。
収穫:時期を逃さず、色づいたら収穫
収穫の目安は、市販のものと同じく、おいしそうに色づいたらもう食べ頃です。
時期を逃さないよう収穫するのがポイントです。
「一度に収穫するのはもったいない」と木につけたままにすると、すぐに果肉がバサバサになったりしておいしさが落ちますので注意してください。
剪定:少し暖かくなってから剪定
剪定(せんてい)は、真冬の極寒期にすると木を傷めます。2月後半から3月に行いましょう。
ちなみに、みかんは3〜4月頃まで花芽と葉芽の区別がつきません。
果実は主に春枝の先端部分につくので、春枝を切ってしまうと実がなりません。
そのため、剪定といっても強い剪定は必要がなく、もし秋口に夏枝・秋枝の除去を行っている場合は剪定しなくても大丈夫です。
秋口の剪定を行わない場合は、長く伸びた枝(夏枝)や混み合っているところの短い枝(秋枝)を切り取りましょう。
肥料を与える時期
肥料は2月に元肥(もとごえ)、6月に追肥(ついひ)、11月に礼肥(れいひ)を施します。
与える肥料は、果樹対応の有機配合肥料か速効性化成肥料です。
害虫:木を枯らしてしまうカミキリ虫には要注意!
害虫被害で最も多いのがアゲハチョウの幼虫(イモムシ)です。
まあ、よくむしゃむしゃと葉っぱを食べます。かわいそうですが見つけ次第退治してください。
また、カミキリムシは大敵です。
5月〜6月に成虫がみかんの根元や枝に卵を産みつけます。
6月〜10月に卵からかえった幼虫が幹中心部を食べながら成長・羽化し、丸い穴を開けて外へ出てきます。こうなると木は枯れてしまいます。
成虫は見つけ次第捕殺しましょう。
もし幹におがくず状の粉のようなものがついていて、近くに穴があったら幼虫がいるサイン!細い棒などでつついて殺します。
成虫が卵を産むのは5月〜6月、幼虫は6月〜10月。発見が遅くなれば手遅れです。カミキリムシにはくれぐれも注意を!
家庭菜園のプロのワンポイントアドバイス
ここから4〜5年待たないと実がなりませんが、気長に待ちましょう。
最初に収穫できたときは感激しますよ♩
みかんは手間がかからず家庭菜園向きの果樹なんです
いかがだったでしょうか?
今回は「家庭菜園での失敗しないみかんの育て方」を解説してきました。
以前、静岡県の柑橘試験所(現果樹研究センター)を訪問した経験があるのですが、おいしいみかんの産地として知られる静岡県三ヶ日町は、かつては荒れ地で野菜はほとんど育たなかったそうです。
しかし、みかんを植えてみると不思議と味の濃い甘いものが収穫できました。
このように、みかんは荒れ地でも育ち、ほとんど手間がかからず、毎年収穫できる”優等生果樹”なのです。
初心者の方でも、是非ご家庭で楽しんで栽培してくださいね。