甘さの中に独特な風味があり、ケーキの飾りやジャムなどに使われることが多い人気のフルーツ「ラズベリー」。
ビタミンCや鉄分などの栄養素がバランスよく、特にポリフェノールが多く含まれていて、健康食品としても人気のベリーです。
実が非常に傷みやすく、有名な割には産直の店以外ではあまり流通していません。
なかなか手に入りにくく、家庭菜園でも育てやすいラズベリー。あなたもこの機会に育ててみませんか?
今回は家庭菜園のプロが、鉢植えやプランターで簡単にできる、ラズベリーの育て方・栽培方法のコツを解説していきます。
簡単に栽培できるラズベリーで映えるお菓子作り♩
ラズベリーは自生している品種も多く、果実用に改良された品種も日本の気候風土にとてもなじみ、どこでも育てやすい果樹です。
特に、耐寒気温マイナス35℃と寒さに強く、極端な寒冷地や高地以外、全国どこでも栽培可能です。
さらに大きくても1.5mくらいにしかならず、果樹栽培初心者でも失敗が少ない、家庭菜園に最適な果樹です。
植木鉢やプランターでも実がよくなるので、マンションやアパート住まいの方にもおすすめです♩
ラズベリーの品種:二季成り品種は1年で2回収穫できる
ラズベリーには“一季成り”と“二季成り”の品種があります。
一季成り品種
“一季成り”は、年に1度、夏だけに実ります。
品種は少し大きな赤い実がなる「ファンタジーレッド」や果実が黄色い「ファールゴールド」などがあります。
実が黒い「ブラックキャップ」も“一季成り”です。
二季成り品種
“二季成り”は6月と9月の年2回実をつけ、収穫が可能です。
代表的品種は「インディアンサマー」や「ヘリテージ」「サマーフェスティバル」。赤い実をつけます。
大粒で黄色い実がなる「ジョイゴールド」も人気です。
「ひこばえ」により毎年生まれ変わるラズベリー
ラズベリーは毎年実がなりますが、実をつけた幹は1年限りで枯れてしまいます。
そのかわり「ひこばえ」と呼ばれる新芽が株元から出てきて、何本もの枝を伸ばしながらぐんぐん伸びてきます。
枯れた幹のかわりに、この「ひこばえ」から伸びた枝(新梢/しんしょう)が実をつけるのです。
さらにその「ひこばえ」も1年で終わり、次の“ひこばえ”に引き継がれます。
このように、毎年毎年生まれ変わっていくのが特徴の果樹です。
ラズベリーの苗・用土:たった2年で実をつけるうれしい果樹
苗の準備
苗は、最近だとネットショップが便利で、種苗店やホームセンターでも入手できます。
ラズベリーは自家和合性(じかわごうせい)なので、1本あれば実がなります(果樹の中には2本必要なものもあります)。
品種は一季成り、二季成り、赤い実、黄色い実、黒い実などいろいろあるので、好みのものを選んでください。
おすすめは果実を年に2回楽しめる「二季成り品種」です。
また、すぐ収穫したいという方は2年目の苗を。安く抑えて気長に生育を楽しみたいという方は1年苗でもOK(2年目以降は大体実がつきます)!
さらに、ラズベリーの木には基本的にトゲがあります。トゲなし品種を選ぶと手入れが楽なので、トゲなしがあればそちらを選ぶと良いでしょう。
用土の準備
用土はあまり選びませんが、庭植えの場合、腐葉土を混ぜるなどして水はけ・保水力を改善してください。
鉢植え栽培の場合は、市販の果樹用の土を使用すればOK。
鉢底には鉢底石を3cmほど敷き詰めて、水はけをよくしておきます。
ラズベリーの植え付け:厳冬期は避けて浅めに植え付ける
植え付け時期は11月から3月で、厳冬期は避けてください。
植え方のポイントは浅めに植えること。あまり深く植えると「ひこばえ」の発生が悪くなり、結果的に実のなりが悪くなることがあります。
準備する鉢のサイズですが、苗のポットより2まわり以上大きなものを選んでください。
ラズベリーの仕立て:ほとんど手をかけなくてOK
2年目の苗でも、春先には根元からシュッと枝が生えてきます。これを「ひこばえ」といい、翌年に実がつきます。
ラズベリーは、この「ひこばえ」が根元から発生して世代交代をし、もう1つ地下茎を伸ばして新たな芽を出して増殖していきます。
さて、ラズベリーの仕立ては、株仕立て(かぶしたて)といって、ほとんど手をかけずにありのままに育てる方法を取ります。
最初からあった幹は枯れてしまうので、枯れた後は根元から切り取ります。
また、毎年枯れて増えてを繰り返す内に「ひこばえ」の発生量が増え、鉢植えが窮屈になってしまいます。その場合には、混みあわないように「ひこばえ」を整理しましょう。
地植えの場合
ラズベリーは樹勢が強く、地植えだと4〜5年もすると5m以上離れたところからも顔を出してきます。
新しく出てきた芽は1年目から結構大きく成長し、「庭中ラズベリー…」ということにもなりかねません。
増えてきたな〜という場合は新たな芽を処分しましょう。処分したとしても元の株は元気なままで、ラズベリーがなくなることはありませんよ。
鉢植え栽培の場合
鉢で栽培している場合、容器の壁が邪魔をして、地下茎はあまり伸びることはありません。
たまに鉢の縁から新しい芽が顔を出すことはあるものの、それを掘り起こして別の鉢に植え替えてしまえばラズベリーを増やすことができます。お得なのでおすすめです♩
ただし、何年もそのままにしておくと根詰まりしてしまうので、2まわりくらい大きなコンテナに植え替えてください。
根が鉢から出ている、水がなかなかしみこまない、など根詰まりした場合。
若い苗の場合は2年に1度は必要になります。
ラズベリーの収穫:適期を逃すとすぐ崩れてしてしまうので注意
ラズベリーの花は前年に伸びた「ひこばえ」に花芽がつき、その花芽から新梢が伸び、葉と花がつきます。花は新梢の先端付近に少しまとまってつき、可愛らしい白い花を咲かせます。
一季なりの品種
一季なりの品種は6月~7月に熟します。しっかり熟さないと酸っぱさが残っています。
一方で、熟しすぎるとすぐ崩れてしまい甘〜い香りが周囲に漂います。そうなるとすぐに虫が寄ってきて虫たちのご飯になってしまいます。
熟しすぎる前に、しっかりと張っていてちょうどよい色合いのものを収穫しましょう。ためしどりをおすすめします。
二季なりの品種
二季なりの品種は、1年に2回の収穫時期がありましたね。
まずは、春に根元から出てくる「ひこばえ」に9月~10月頃実がつきます。
6月頃収穫できる実のついた幹は、その年に枯れてしまいますが、「ひこばえ」は実が終わると、翌年はそこから出た枝に6~7月頃実をつけます。
ラズベリーの剪定:簡単!上へ伸びないので間引くだけでOK
果樹栽培では管理がしやすいように枝を切り詰めたり、形を整えたりします。
ラズベリーの木の剪定は、間引くだけで簡単です。
剪定は11月から2月頃の休眠期に行います。
前述の通り、その年に実をつけた幹は枯れてしまいますので、それを根元から切り取ります。
ラズベリーには直立性のものと、少し横に広がる開帳性(かいちょうせい)の品種がありますが、広がりすぎた場合には、枝元から30cmくらい残して切り詰めます。
花芽は枝全体に分散してつくので、先端部分を切っても実がなくなることはありません。
ひこばえが多すぎる場合は、少し間引くといいでしょう。特にプランター・鉢植えでの栽培の場合は土が少ないので栄養分が足りなくなる恐れがあり、病気にもかかりやすくなるので注意してください。
ラズベリーは幹が細いので支柱が必要です。幹は1年ごとに新しいひこばえに更新されますので、毎年支柱に結び直します。
肥料:年に3回、有機分を含んだ肥料を
肥料は有機成分を多く含んだ有機配合肥料を1年に3回与えます。
3月に元肥(もとごえ)として与え、果実が成長する5月頃に追肥、さらに9月~10月頃に礼肥を施します。
ラズベリーだと、元肥は一握り、追肥はふたつまみ、礼肥はひとつまみぐらいが目安です。
病害虫:コンテナ栽培の敵はコガネムシの幼虫
ラズベリーは病気に対してはかなり強く、ほとんど心配ありません。
ただし、風通しが悪いと「灰色カビ病」が発生しますので、間引くことで対策します。
特に、鉢植えでの栽培では実を多くつけようと欲張ってひこばえを残しすぎないよう要注意です。
害虫はコガネムシの幼虫に注意してください。鉢植えでの栽培では根が食い荒らされ、枯れることがあります。
対策としては根のまわりを、根を傷めない程度に掘り返してください。白い丸まった幼虫が出てきます。また、植え替えるときには幼虫がいないかよく探しましょう。成虫は見つけ次第捕殺してください。
実が過熟してしまうとすぐにアリやカメムシが寄ってきます。熟しすぎて虫が寄る前に収穫しきってしまうことが大切です。
プロのワンポイントアドバイス
ラズベリーは背が高くならず、病害虫も少なく手間がかからないので、プランター・鉢植え栽培に非常におすすめの果樹です。
ポイントはひこばえの間引きを行うことです。風通しがよくなり、病害虫対策になりますよ♩